2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16755
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Research Institution | Shiga Junior College |
Principal Investigator |
金澤 雄介 滋賀短期大学, その他部局等, 講師 (70713288)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サルデーニャ語 / ロマンス語学 / 歴史言語学 / 文献学 / クリティック / 情報構造 / トピック / スペイン語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の前半は、文献 Condaghe di San Pietro di Silki(11 世紀~12 世紀)を主な資料として、古サルデーニャ語における「前置詞付き直接目的語」(特定の文法的特徴を持つ直接目的語が前置詞 a によってマークされるという現象)について、情報構造、ならびに情報構造と目的語の意味的特徴のかかわりの観点から考察をおこなった。本研究で明らかにしたことは次の 2 点である:(1) 人間を表す名詞では、それがトピックであるか否かに関わらず、前置詞は義務的に現れる。(2) その目的語がトピック要素であれば、意味的特徴に関わりなく、前置詞をともなう。また、このような前置詞の出現規則は通言語的に広く観察されることを、系統の異なる言語の例と対照させることで示した。 本年度の後半は、上述の文献を資料として、古サルデーニャ語におけるクリティックの重複に関する記述と考察を試みた。本研究で明らかにしたことは次の 3 点である:(1) クリティックの重複は、特定の意味的特徴(有生性/定性)を持つ目的語における一致の標識としての機能を持つ。(2) 二重目的語構文において、クリティックの重複は先行するほうの目的語、つまりよりトピック性の高い目的語に観察される。(3) (2) の分析を支持する根拠として、左方移動構文では、左方移動要素はクリティックによる繰り返しをともなうが、本来の位置にある(非トピック要素である)目的語は、たとえ有生名詞など「トピックになりやすい」名詞であっても、重複を受けないことを挙げた。以上の考察から、クリティックの重複は一致の標識として完全に文法化しているのではなく、談話的な機能を保持していると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古サルデーニャ語における 2 つの文法的現象、すなわち前置詞つき直接目的語とクリティックの重複に対して、情報構造がどのような影響を及ぼしているかという問題に対して、新たな知見を示すことができた。ただし現段階では、情報構造に関わる理論的な枠組みについてまだ不十分な面がある。また、この 2 つの現象どうしの関連について扱うことができていない点も、今後の課題である。 以上の理由から、「(2) おおむね順調に進展している。」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は古サルデーニャ語における前置詞つき直接目的語とクリティックの重複という 2 つの現象について考察をおこなった。これらの文法的現象はいずれも情報構造と密接に関連している。それにもかかわらず、本年度は両者を独立した現象として考察するにとどまった。今後は 2 つの現象どうしの関連、および両者の統一的な記述・考察を試みる。それによって、古サルデーニャ語の情報構造についてさらなる知見が得られることが予想される。 上記の研究を推進するにあたっては、他のロマンス諸語における並行例の考察が重要な役割を果たす。今年度はスペイン語との対照をおこなった。今後はルーマニア語における並行例を分析し、ロマンス語学の観点に立った包括的な研究を推進したい。
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Research Products
(5 results)