2015 Fiscal Year Research-status Report
対乳児音声の分析と計算論モデルによる母音獲得過程の解明
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15K16756
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
宮澤 幸希 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (90631656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 言語獲得 / 母音 / 長母音 / 階層ベイズモデル / 混合効果モデル / 教師なし学習 / 音声分析 / 対乳児発話 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度前半は、母子間コミュニケーション及び乳児言語獲得の解析のための音声データベース(コーパス)の新規収録及びアノテーション作業を実施した。申請者の所属研究室で過去に収録済みの「理研母子会話コーパス(Riken Japanese Mother Infant Conversation Corpus, R-JMICC)」に加えて、昨年度申請者が中心となって収録した「母子と乳児型ロボットの三者会話コーパス(大阪大学との共同研究)」のアノテーションを実施した。また、これらのコーパス中に出現する母音の解析を行った。母音のスペクトル包絡特徴に着目した声質の解析、及び混合効果ロジスティック回帰分析の手法を組み合わせて、対乳児発話の母音の音響的特性が大きなバリエーションを持つなど新たな知見を得た。本研究の成果を海外の論文誌に投稿し、現在査読中である。 27年度後半は、乳児が自然な連続音声から母国語の母音体系を獲得する過程を説明しうる統一的なモデルを構築すべく、米国メリーランド大学に3ヶ月間の長期出張を行った。理研母子会話コーパスは自然で大規模な対乳幼児音声のデータベースとして世界的にも類を見ない規模であり、申請者の米国訪問によって、米国の共同研究者がこのデータにアクセス可能となる。申請者らは日米の対乳児発話音声を入力として、ベイジアンアプローチによる教師なし学習モデルのシミュレーションを実施した。本成果は共著者がボストン言語獲得学会に投稿中である。 各テーマに関連して、共同研究契約を結んでいる大学の卒業論文学生の技術指導も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理研母子会話コーパスの解析結果が論文投稿に至ったことに加えて、米国メリーランド大学との共同研究の結果、当初の想定以上に日本語の長短母音の教師なし学習が成功したため、研究計画は概ね順調に進展していると言える。本共同研究において、申請者は音声音響学・コーパス言語学の観点から入力データ及びモデルの出力結果の解析を実施した。本共同研究の成果はすでに論文化のめどが立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では三ヶ年計画として、2年目以降はモデルの精緻化及び教師情報の種類を行う予定であった。しかし申請者の転職の都合上、2年目は研究の規模を縮小し、主に投稿済み論文の修正対応を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
解析関係のアルバイト人件費、論文校閲料金等が必要になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
解析関係のアルバイト人件費、論文校閲料金等
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