2016 Fiscal Year Research-status Report
南米ボリビア・サンフアン日本人移住地における宗教生活語彙体系の調査研究
Project/Area Number |
15K16761
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
小川 俊輔 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (70509158)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 言語地理学 / 日本語学 / キリシタン / キリスト教用語 / 宗教生活語彙 / ボリビア / 日系南米移民 / 危機言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
【本研究の目的】本研究の目的は、ボリビア多民族国サンフアン日本人移住地における宗教生活語彙体系の記述である。この移住地は昭和30年に創設され、現在の日系人口は700名ほどである。そのうち約半数が長崎県出身者(とその子孫)であり、彼らのほとんどが〔江戸時代のカクレキリシタンを先祖に持つ人々〕である。この移住地の宗教生活語彙を記述した研究は皆無である一方、現在、移住者1世の高齢化が進み、年々亡くなる方が増えている。すなわち、「危機言語」的状況にあり、早急に調査・記述する必要がある。
【平成28年度の主な研究成果(2点)】 《1.移住地訪問調査の実施》平成28年8月14日から30日まで、移住地を訪問し、調査を実施した。本報告の執筆者にとって3度目の移住地訪問であった。過去2度の訪問では、この種の調査・研究において最も重要と言われる「人間関係の構築」に意を用いた。今回は、既に親しくなった方から重点的に聞き取り調査を行い、36444文字分の調査データを得た。
《2.新たな研究展開》ボリビア多民族国サンフアン日本人移住地訪問調査の折、飛行機のフライト・スケジュールの関係で、ブラジル・サンパウロに1泊することになった。この折に、サンパウロ市内にある「ブラジル長崎県人会」事務所を表敬訪問したところ、ブラジルにも第二次大戦後に長崎から移住したカトリック教徒が多くおり、熱心なカトリックの信仰生活を続けている、との情報提供があった。他方、中国・南京市で開催された14th Urban Language Seminarにおいて研究発表を行い、中国、内モンゴル、台湾、マカオなどに在住の研究者たちとネットワークを作ることができた。以上2件は、本報告の執筆者の今後の研究展開を考える上で、有意義な経験・成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記した研究計画(3年)では、各年度2度、移住地を訪問することになっていたが、交付された研究費の額から、各年度1度しか訪問できなくなった。現地に出かけて調査する、という本研究の性格からして、移住地訪問回数の半減は、そのまま研究成果の半減を意味する。それで、「(3)やや遅れている。」を選んだ。しかし、これは致し方のないことである。
他方、【研究実績の概要】欄に記したとおり、新たな研究の展開について、明るい見通しを持つことができた。この点では、「(1)当初の計画以上に進展している。」とも総括できそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
【移住地訪問】交付申請書類には、平成27年度から29年度にかけて、移住地を6回訪問し、調査を実施すると記していた。しかし、決定された交付金額から、3年間で3度しか、移住地を訪ねることができなくなってしまった。校務等を遣り繰りし、残り1度となった移住地訪問の折には、できるだけ長く現地に滞在できるよう努めたい。
【移住者との交流】現在、移住地はインターネット環境が整い、移住者の方と即時に連絡が取れる状況にある。実際、何人かの移住者の方とはSNSで連絡を取り合っており、適宜助言をいただいている。また、移住地訪問の折には様々な便宜を図っていただいている。今後もご協力を仰ぎ、国内でできる調査研究および訪問調査の準備を進めたい。
【研究成果の発表】研究の質を高める為、同じ分野および近隣諸分野の研究者から適切な助言を得たいと考えている。平成27・28年度に引き続き、積極的に学会発表や論文発表を行いたい。
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Research Products
(6 results)