2017 Fiscal Year Research-status Report
地域的変種における促音を中心とした音声詳細の世代的多様性
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15K16762
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
久能 三枝子 (高田三枝子) 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (90468398)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音声資料収集 / 音声資料整備 / 熊本方言の分析 / 年層(世代)差 / 性別差 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)追加資料の収集 前年度に引き続き、追加資料を得るため、東京で調査を行い音声資料を収集した。現時点で、熊本73名・秋田41名・東京40名・大阪22名の調査を終えた。大阪が少々少なく、現時点で調査協力の見込みはたっていないが、できれば話者を増やしたい。またいずれの地域も1920年代生まれの話者の資料が相対的に少ない状態である。現在の資料の収集は本助成事業にとどまらず、今後の研究の資料としても大変貴重な資料となる。 (2)追加資料の整備 前年度までに整備を行っていた既存資料の整備について改めて点検したところ、整備が不完全な部分が確認され、それについても整備を進めた。また前年度及び今年度の新たな調査によって得られた資料についても順次、整備を行った。調査者の基本情報の入力は終わっているが、音声資料の整備(発話項目ごとのsegmentation)は熊本と秋田をほぼ終え、東京と大阪が残っている。この整備により、収集音声は分析のための音声コーパスとして最低限のアノテーションができ、利便性が格段に上昇した。 (3)分析・考察 まず既存の資料の分析を行いその結果を論文としてまとめ、愛知学院大学人間文化研究所紀要『人間文化』に投稿し掲載された。続いて収集を終えた熊本の音声資料について分析を行い、第31回日本音声学会全国大会(2017年9月30日、東京大学)にて発表した。上記の報告では、①有声促音における閉鎖区間の声帯振動について明確な地域差があること、②有声促音における閉鎖区間の声帯振動の持続に性別差があること、また③熊本における同現象には明らかな年層差も見られること、を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集については、おおむね順調といってよい。ただし、各地域1920年代生まれの話者と、大阪の話者については他に比べ収集率が低い。今年度も追加の調査はできる限り続けたいと考える。 収集資料の整理については、既存資料の整備が一部残るほか、新たな収集資料のうち東京・大阪については途中である。これは予定より少々遅れ気味であるので、今年度中にすべて終わるよう、アルバイターを頼み、進めていきたい。熊本・秋田については基本的な整備は終わった。 分析と発表については、一部(熊本)については予定を早め、論文の投稿まで進めることができた。今年度は他の地域についても分析を進め、発表を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集については、収集率が低い大阪と各地域の1920年代を中心に、また各世代×性別=各5名を目標として、協力が得られる限り続けたいと考える。 収集資料の整理については、残っている既存資料、および東京・大阪資料の整備を進め、今年度中にすべて終わるよう、アルバイターと相談しながら進めていきたい。 分析および発表については、熊本以外の地域について、分析を進め、発表を行いたい。 なお自らの資料の分析の過程で、あるいはまた他の研究者による研究成果(松浦年男(2018)「山形県村山方言における有声促音の音声実現に関する予備的分析」『北星論集(文)』55-2, 43-52p. 北星学園大学文学部)の報告から、東北方言における音声実態についての新たな知見が得られた。すなわち、東北方言において有声促音の音声実態について一様ではないことが明らかになり、この点についてはさらに検証を進めたいと考える。現時点では特に過去に行われている調査報告などの再検証が必要であると考える。
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Causes of Carryover |
平成28年度に前倒し申請をし、平成29年度分から5万円、平成30年度から15万円、計20万円前倒しをした。しかし実際に入金されたのが2月であり結果としてほとんど使うことができなかった。平成29年度はほぼ予定通り事業を進めたが、本事業当初の予定より5万円ほど残金が生じた。以上のことから当該年度末に25万円余りの次年度使用額が生じた。 今年度の使用計画としては、昨年度よりアルバイター、研究支援者による作業をスピード感をもって進めるつもりである。その分の費用、すなわち人件費及びその他費用として使用する予定である。また今年度は最終年度であり、各方面で学会発表を行う予定である。その出張にかかる費用も必要である。さらに、できれば現在手薄な大阪の調査を追加で行いたいと考えており、その費用としても使用したい。
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