2015 Fiscal Year Research-status Report
縮約関係節と比較節の統語論研究によるラベル決定の仕組みの解明
Project/Area Number |
15K16769
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
戸澤 隆広 北見工業大学, 工学部, 准教授 (70568443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生成文法 / 英語 / ラベル決定の仕組み / 縮約関係節 / 比較節 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生成文法のミニマリスト・プログラムの枠組みで、英語の縮約関係節構文と比較構文に統一的分析を与えることで、ラベル決定の仕組みを解明することを目的とする。 平成27年度は縮約関係節構文と比較構文の内部構造を解明するための基礎研究を行った。具体的には(i)先行研究の精読、(ii)データ収集・統語的特性の記述、以上の二点を行うことで、次年度以降の理論的研究の基盤を築いた。 (i)について、縮約関係節では、節の範疇に着目しながら精読を行った。Kayne (1994)、Bhatt (1999)、Krause (2001)など主要文献を精読し、それぞれの分析の利点と問題点を明らかにした。これらの文献以外に、論文を数多く精読することで研究を深めた。比較節では、移動要素に焦点をあてながら精読を行った。Chomsky (1977)、Kennedy (1999)、Lechner (2004)など主要文献を精読し、それぞれの分析の利点と問題点を明らかにした。また、比較構文の意味論関連の文献も精読することで研究を深めた。 (ii)について、移動要素に着目しながらデータの収集作業を行い、その後データの検討を行った。これにより、次の二点を確認した。(i)移動要素の句範疇が移動先でラベルになれることを確認した。(ii)移動する要素が基底生成する位置を確認した。さらに、多くのデータを収集・整理し、縮約関係節構文と比較構文に共通する統語的特性を記述した。また、研究者との交流により、情報収集も行った。 研究活動の成果として、日本英文学会東北支部第70回大会シンポジウムにおいて、「英語の縮約関係節構文と比較構文について」というタイトルで口頭発表した。同発表では、従来の考えと異なり、移動要素の句範疇が移動先でラベルになれると主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は平成28年度の理論的研究に向けての基礎研究に位置づけられる。平成27年度の達成目標は(i)縮約関係節と比較節の内部構造の解明に向けて先行研究を調査する、(ii)縮約関係節構文と比較構文のデータを収集し、両構文の統語的特性を記述する、以上の二点であった。 (i)について、主要論文を精読し、論点を整理することで、縮約関係節と比較節の内部構造の研究を深めた。この研究から、縮約関係節はTPで、比較節はCPの可能性があることが分かった。 (ii)について、縮約関係節構文のデータを検討した結果、縮約関係節構文は関係節構文と統語的に異なる特徴があることが明らかになった。比較構文のデータ収集では、主要部繰り上げ分析を支持するデータと、空演算子移動分析を支持するデータが見つかった。本研究は比較節の主要部繰り上げ分析を支持しようとする。従って空演算子移動分析を支持するデータについては、今後の研究課題にした。 これらの成果を日本英文学会東北支部第70回大会シンポジウムにおいて、口頭発表した。 以上、次年度の課題も見つかったが、平成27年度の達成目標の(i)と(ii)はほぼ達成できたと思われる。従って、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降では、平成27年度で行った基礎研究を土台とし、理論的研究を行う。主な研究項目は、(i)従来のラベル決定の仕組みの批判的検討とラベル決定の仕組みの精緻化、(ii)仮説の構築と検証、(iii)構成素のラベル決定の仕組みとフェーズ理論との関連の調査、以上の三点である。 (i)について、Donati (2006)、Chomsky (2008, 2013)のラベル決定の仕組みに対し、経験的問題を提示し、移動要素がラベルになる仕組みをより精緻化する。 (ii)について、移動要素の句範疇がフェーズで且つ、指定部に要素を持たない場合、それは移動先でラベルになれるという仮説をたてる。この仮説から縮約関係節構文と比較構文の統語特性を予測し、この予測を検証する。また、この仮説がDonati (2006)、Chomsky (2008, 2013)の経験的問題を解決することを示すことで、当該仮説の優位性を示す。 (iii)について、一般的に、句範疇は移動先でラベルになれないとされている。本研究では、ラベル決定にはフェーズ不可侵条件が関わるという仮定のもと、移動要素の句範疇が移動先でラベルになれる可能性を追求する。 これらの研究成果を学会または論文などで発表し、研究者から示唆をいただきながら理論的研究を進める。
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Causes of Carryover |
平成27年度では、想定していたよりも多くの物品(とりわけ図書)が研究室や書庫に配備されていたため、物品費の支出が計画を下回った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の直接経費は500,000円である。このうち、設備備品費に150,000円、消耗品費に35,000円、旅費に300,000円、その他に15,000円を使用する。概ねの内訳は以下の通りである。 (1)設備備品費150,000円(図書15冊)、(2)消耗品費(プリンタートナー30,000円、USBフラッシュメモリー5,000円)、(3)旅費300,000円(研究調査100,000円、研究打ち合わせ100,000円、成果発表旅費100,000円)、(4)その他15,000円(複写費8,000円、通信費7,000円) また、27年度の繰越金の111,385円はデータ保存のためのコンピューターの購入に使用する。
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Research Products
(2 results)