2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16777
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
後藤 亘 東洋大学, 法学部, 助教 (50638202)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | labeling theory / spell-out / n=2 / Merge(X, Y) = {X, Y} / Merge requires search / search requires labeling / minimal computation / CED effects |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、英語と日本語の句構造を観察し、これまでさまざまな条件を措定することによって説明されて来た言語現象に対して、Chomsky (2013, 2015)の「ラベル付けアルゴリズム」の観点から統一的な説明を与えることを目的としている。特に、「ラベル付けはどのように行われるのか?」というメカニズムの問題と「ラベル付けはそもそもなぜ必要なのか?」という理論的根拠の問題を実証的に検証することによって目的の達成を目指している。 平成27年度は、この2つの問に対してそれぞれ、ミニマリスト・プログラムのから「XP-YP構造はSpell-Outの適用によりラベル付けられるようになる」という提案と「ラベルはMergeのinputとなるnの値を決定する際に関与するsearchの領域を最小化する為に必要である」という提案を行い、そこから得られた研究成果はそれぞれ[1]と[2]の業績として纏めることができた。
[1] Kensuke, Takita, Nobu Goto, and Yoshiyuki Shibata (2016) "Labeling through Spell-Out." The Linguistic Review, 177-198.
[2] Goto, Nobu (to appear) "Labelability = Extractability: Its Theoretical Implications for the Free-Merge Hypothesis." In Proceedings of the 46th Annual Meeting of the North East Linguistic Society.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては「当初の計画以上に進展している」と言える。その理由としては、本研究の成果として「XP-YP構造は主要部移動によりラベル付け可能になる」という新たな着想が生まれ、論文の形として纏めることができ、現在、国際学術雑誌に投稿中であるからである。この新たな着想により、Chomsky (2015)が提案した「Tの強さ」に関する措定的媒介変数(strong/weak paramter on T)が排除できる可能性が得られ、最適な言語デザインを設計する上で非常に重要な視点になりつつある。 また、「XP-YP構造は主要部移動によりラベル付け可能になる」という主張は「主要部移動の適用を受けたXP-YP構造からの摘出は許される」という新たな予測をももたらしている。XP-YP構造は、主要部移動によりXP-t構造のラベル付け可能な構造、すなわち、searchにとって接近可能な領域になるため(上記[2]参照)、その中からの摘出は許されると予測されるのである。この予測は、当初の研究計画を越えたものであり、現在、「主語摘出現象」と「指定的効果現象」を中心に予測の検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、「XP-YP構造は主要部移動によりラベル付け可能になる」という視点をさらに実証的に検証し、ラベル理論における主要部移動の働きについて深く考察していく予定である。特に、主要部移動がある言語とない言語では「EPP効果」に対して「主要部移動がない言語(英語)では、EPPはXP移動により満たされるが、主要部移動がある言語(イタリア語)では、EPPはX移動により満たされる」という予測が得られたため、今後の研究課題として[3]の目標を掲げる。
[3] 顕在的wh移動言語(英語)と非顕在的wh移動言語(日本語)のパラメータ的違いをどのようにしてラベル理論のもとで捉えることができるか?
この課題に対して、現在考えてる方向性としては、可視的な疑問詞マーカー「か・の」の有無が重要な働きをしているのではないかと考えている。今年度1年間の研究を通して、その本質を明らかにし、当初計画していた以上の成果をラベル理論に対してもたらしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会(GLWO in Europe)が1つ不採択になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度開催される国際学会(未定)に応募予定。
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