2015 Fiscal Year Research-status Report
外国人看護・介護人材の職場におけるコミュニケーションの研究
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15K16783
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
嶋 ちはる 国際教養大学, 公私立大学の部局等, 助教 (00707630)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外国人看護・介護人材 / 職場でのインターアクション / 申し送り / 言語社会化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外国人看護・介護人材の職場におけるコミュニケーションの特徴や、職場での日本語習得過程を明らかにすることを目的としている。平成27年度は、主に(1)収録済みのデータの整理・分析と(2)データの収集を行った。 (1)収録済みのデータの整理・分析 過去に収録された関西地方の病院の急性期病棟及び療養期病棟における計10日分の看護師の申し送り場面の録音・録画データの文字化や整理を行い、分析用のデータ資料を作成した。これらを形態素解析にかけ、頻出度の高い語彙を抽出したり、看護師国家試験で出題されている語彙との比較などをしたりしながら、申し送りに特徴的な語彙の分析を進めた。また、過去に収録された関西地方の介護老人保健施設における申し送りの録画・録音データの文字化、整理を行った。こちらのデータ資料は会話分析という手法を用いて、どのように情報伝達が行われているかという視点から分析を行っている。 (2)データの収集 関西地方にある介護老人保健施設で(前述の施設とは別)、二週間にわたるフィールドワークを行い、介護士同士のやりとりや、介護士と認知症の入居者とのやりとり、医師や理学療法士など、他職種が参加するカンファレンスにおけるやりとりなどの録音・録画を行った。プライバシー保護のために、データ収集に入る前の事前準備(データ収集の依頼、全職員に対する説明、認知症患者本人及び家族への説明、コンセントフォームへのサイン)に十分に時間をかけた。また、過去に日本で働いていた4人のインドネシア人元EPA看護師候補者(既にインドネシアに帰国)について、彼らの現在の職場を訪ね、彼らの帰国の選択や日本での経験、現在の仕事への影響についてインタビュー調査を行った。また、可能な場合には、許可を取り、彼らの現在の職場での実際の仕事ぶりを観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、収録済みのデータの整理・分析と新規のデータ収集を行うことを目的とし計画を立てた。前者については、ほぼ当初の計画通りに進めることができた。後者については、過去にフィールドワークを行っていた施設でデータ収集を継続するつもりであったが、施設側の事情で今年度は外国人人材を採用しないということになり、予定を変更せざるを得なくなった。外国人人材が働く施設でのデータ収集については、新たに協力施設が見つかったため、現在はそちらでデータ収集が行えるように準備をしているところである。また、外国人人材は働いていないが、看護・介護現場での実際の言語使用に関するデータ収集について協力を得られた施設があったため、平成27年度は主にそちらの施設で申し送りや介護人材と入居者とのやりとりなど、看護・介護分野におけるインターアクションの場面の録音・録画を行った。過去に日本で働いていた元EPA看護師候補者についての調査については、予定通りインドネシアで行うことができた。以上を考えると、データを収集する施設や収録するインターアクションの内容に多少の変更は生じたものの、結果としてデータ収集自体は問題なく行うことができたため、平成27年度の計画はおおむね順調に進めることができたと言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、主に(1)文字化・整理されたデータの分析、(2)平成27年度に収集されたデータの文字化・整理・分析(3)データ収集、という3点を進めていく予定である。(1)については、申し送り時のデータを中心に、引き続き使用されている語彙や、情報伝達の仕方について分析を深める。(2)については、新たに申し送り場面でのインターアクションデータが収録できたこともあり、文字化等のデータ整理を行うことにより、過去の申し送り場面におけるインターアクションのデータの補充をすることが可能となり、データベースの拡大につなげることができる。また、平成27年度に収集した帰国後の元EPA候補生に対するインタビュー資料を整理し、過去のデータと合わせ、個人の縦断的変化を中心に整理・分析を行い、キャリアの変化と言語使用・言語学習との関係について分析を進める予定である。(3)のデータ収集については、外国人看護・介護人材が働く施設におけるインターアクションデータの収集の準備を進め、準備が整った段階で定期的に訪問しデータの録音・録画を行う。また、平成28年度は、すでに帰国したフィリピン人元EPA看護師候補生について、彼らの日本での経験や帰国の選択、現在の仕事と日本での経験の関係についてインタビュー調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
文字化の作業を依頼できる学生がなかなか見つからず、また文字化作業のための研修等に時間がかかったこともあり、当初予定していたよりも文字化の作業にかけられる時間が少なくなった。結果として、平成27年度に必要とした人件費が当初予定していたよりも少なくなったことが次年度使用額が生じた主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は21,934円とあまり大きくないため、平成28年度に予定している人件費の支出に加え人件費として支出する。
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Research Products
(2 results)