2015 Fiscal Year Research-status Report
留学生のための、特殊コーパスを用いた、基本的な専門語の新規抽出法とその活用
Project/Area Number |
15K16786
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
喜古 正士 早稲田大学, 付置研究所, 招聘研究員 (90632183)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 専門語 / 専門日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
《目的・計画》 本研究の目的は、理工系留学生が専門分野の学習をする際に必要となる、“基本的な専門語”を効果的に抽出・提示するための方法を明らかにすることである。本研究が当面の対象とする語彙は、大学入学程度の物理学の語彙とする。具体的には、問題集をコーパスとして専門語の抽出を行い、名詞以外の専門語や“文脈依存する専門語”に光を当てることで、“基本的な専門語”の実態に迫るものである。平成27年度は、以下の2項目を中心とした研究計画を立てた。 ・構造化された問題集コーパスを作成し、物理専門語を抽出する ・他のコーパスとの比較から“文脈依存する物理専門語”を抽出する 《概要》 主な対象テキストとして、「大学入試センター試験」および「日本留学試験」をコーパスとして、語彙調査を行った。当初の予想通り、試験問題からは効率的に物理専門語が抽出される傾向を確認することはできた。また、当初の計画より広い科目(センター試験は国語・理科・社会、日本留学試験は日本語・理科・総合)の問題文をコーパスとして調査を行うことにより、科目間での品詞構成比率が異なり、また両試験の間にも一定の相関があるという興味深い結果を得ることができた。そこから、“物理の日本語”が留学生にとって難しく感じられる理由について、限定的な考察を行った。また、“物理の日本語”の特徴の一部は翻訳語の成立過程にも影響されていると考え、明治期翻訳資料の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定よりもコーパスの作成に時間がかかり、検定教科書の傍用問題集を用いた「物理専門語」の調査は予定より遅れており、“文脈依存する専門語”に関する考察が不足している。しかしながら、予定外に「大学入試センター試験」を用いた調査を行ったことにより、科目間での品詞構成比率が異なることがわかった。これにより、科目間での日本語表現の異なりについて議論する足がかりを得た。また、“物理の日本語”の持つ特徴を議論するための明治期資料の調査・翻刻を行った。以上より、今後は当初の計画よりも、幅広い研究が行えるようになったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に積み残した調査を継続しながら、当初の計画通り、 ・構造化された問題集コーパスから得られた情報をもとに“基本的な専門語”を策定する ・“基本的な専門語”の学習教材を作成し、その学習効果を測定する ことを中心に据えた研究を行う。また、 ・科目間の比較から、“物理の日本語”の特徴をより明らかにする 研究も加えて行う。予定よりも作業が増えていることを考慮しながら、学習教材の作成期間や方法を見直して調整する予定である。
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Causes of Carryover |
調査内容を増やしたことにより当初計画に遅れが生じ、必要としていた分析まで進まなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度実施に至らなかった調査を含め、期間や方法を見直しながら当初計画を進める。
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