2016 Fiscal Year Research-status Report
タスクが日本人英語学習者における統語情報処理の自動化プロセスに与える影響
Project/Area Number |
15K16796
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
鳴海 智之 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 講師 (40736154)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 統語解析 / 自動化 / 熟達度 / 注意 / 適格性判断課題 / 文法性判断課題 / 意味性判断課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、平成27年度に実施した心理言語学実験について、日本人英語学習者の大学生・大学院生43名を対象にデータの追加収集を行い、実験参加者の熟達度に基づいて分析・考察を行った。その結果、高熟達度の学習者(CEFR:B2以上)は、統語情報や意味情報から注意をそらしても、それぞれ句構造規則違反、意味違反を即座に検出していることが明らかになった。一方、低熟達度の学習者(CEFR:B1以下)は、統語情報に注意を向けられれば統語処理が促進されるが、注意がそらされると、句構造規則違反文の処理に時間がかかることが分かった。また、判断課題の結果から、日本人英語学習者は「意味的には違反しているが、統語的には正しい」という判断ができないことが示された。これらのことから、日本人英語学習者は熟達度が高くなると統語処理の自動化が進んではいるが、依然として「意味主導型」の処理を行っていることが示唆された。これらの研究成果は、思考と言語研究会、および、The 2017 conference of the American Association for Applied Linguistics (AAAL) において発表され、電子情報通信学会技術研究報告:信学技報に掲載された。 また、平成26-30年度科学研究費基盤研究(A)「学習による気づき・注意機能および相互的同調機能と第二言語情報処理の自動化プロセス」(研究代表者:横川博一(神戸大学・大学教育推進機構・国際コミュニケーションセンター・教授)/研究課題番号:26244031)と連携して実施する神経脳科学実験について、平成28年度に新たな脳波測定機器が神戸大学に導入されたことから、それに合わせて実験手法・手順の見直しを行い、データ収集を遂行できる環境を整えた。実験は平成29年度中に実施し、その成果を国内学会・国際学会において発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たに導入された脳波測定機器の使用方法の習得に時間を要し、平成28年度中に予定していた神経脳科学実験を開始することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度中に、神戸大学国際文化学研究科在籍の博士後期課程の大学院生2名(研究協力者)の補助の下、神経脳科学実験を実施する予定である。また、平成29年度は本研究課題の最終年度となるため、平成27年度~平成28年度に実施した心理言語学実験のデータのさらなる分析・考察を行い、論文の執筆を進めることなどを通して、本研究課題の成果を広く社会に発信するよう努める。
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Causes of Carryover |
神経脳科学実験において使用する外国語熟達度テストの変更により、当初予定していたテストの購入を見送ったことや、追加で実施した実験の謝礼の金額が、当初の想定よりも少なくなったことなどが原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、神経脳科学実験の研究成果の発表を国内学会・国際学会において行うための旅費や、製品のアップグレードに伴う心理学ソフトの購入、実験参加者への謝礼などに使用する予定である。
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