2015 Fiscal Year Research-status Report
抽象名詞の可算性とその習得の難しさ:日本人英語学習者への実証研究
Project/Area Number |
15K16800
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
小川 睦美 静岡県立大学, その他部局等, その他 (40733796)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 抽象名詞 / 類別詞 / 有界性 / 境界 / 個別度 / 可算性 / 日本語 / 英語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二言語(L2)学習者による英語名詞の可算性の習得について、抽象名詞に焦点を絞り、その難しさの原因を明らかにするものである。本年度は、難しさが第一言語(L1)からの転移によるものかどうかを明確にするため、日本語抽象名詞と類別詞(つ、個など)の使用分布、メタファーや異質性による抽象名詞の個別度合いを日本語母語話者対象に調査し、抽象名詞における日英語の相違点を比較するためのデータを収集した。 類別詞の共起容認度の結果から、抽象名詞の可算性には有界性(boundedness)に基づく順序があることが明らかとなった。例えば、非有界である出来事を指す名詞より、有界である抽象物を指す名詞の方が数えられる対象として容認されることが多かった。また、アスペクトに基づく動詞分類(状態、継続、瞬間)により選出された名詞においても、非有界である状態・継続タイプより、有界である瞬間タイプの方が数えられる対象として容認されることが多かった。しかし、語彙的有界性の有無が指摘されている形容詞からの転生名詞においては、どの名詞においても数えられる対象となる容認度は低かった。また、有界とされる極限的・相補的意味を持つ形容詞(例:素晴らしい、正しい)より、非有界とされる段階的尺度を持つ形容詞(例:美しい)の方が名詞化した際に数えられることが多かった(例:美しい→美しさ)。このことは、形容詞の名詞化接尾辞「さ」が程度を表すことに起因しており、段階的尺度を持つという形容詞の非有界的特徴が、程度を可算対象として捉えることを促した結果と言える。 これらの結果に加え、固体メタファー、気体・液体メタファーの使用(例:~を固める、~が膨らむ)、異質性の解釈をどの程度容認するか(例:同じ二つの存在を示す、異なる二つの存在を示す)を個別度合いの指標とし、個別化と有界性との関連を分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験アイテムとして当初より多くの名詞を対象としたこと、被験者数を増やしたことにより、データ入力、分析に少し遅れが出ている。データ収集はすべて完了しているため、メタファーの使用、異質性の解釈の容認度の分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本語抽象名詞の個別度合いの指標を完成させるとともに、平成28年度の目的であるL2学習者の単語レベルの調査を進める。 具体的には、(1)同一概念を表す抽象名詞の日英単語訳を調べる、(2)英語抽象名詞の可算・不可算と日本語抽象名詞の個別度に関連性があるのかを調べる、(3)L2学習者を対象に英語抽象名詞の可算性容認度を測り、有界性との関連を調べる、(4)日英語の可算性容認度を比較し関連性を調べる。 前年度において、データ入力に時間がかかってしまい計画に遅れが生じたため、本年度ではオンライン上で回答を集計できるような方法を模索している。
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Causes of Carryover |
英文校閲費として計上していた予算を当該年度では使わなかったため、次年度使用額が生じています。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
英文校閲費として使用する予定です。
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Research Products
(3 results)