2017 Fiscal Year Research-status Report
抽象名詞の可算性とその習得の難しさ:日本人英語学習者への実証研究
Project/Area Number |
15K16800
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小川 睦美 日本大学, 商学部, 助教 (40733796)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抽象名詞 / 可算性 / 有界性 / 境界 / 冠詞 / 英語 / 日本語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二言語(L2)学習者による英語名詞の可算性の習得について、抽象名詞に焦点を絞り、その難しさの原因を明らかにするものである。平成29年度では、(1)日本語と英語の名詞における抽象・具象の判断課題、(2)可算・不可算の判断課題、(3)英語における文脈内での可算性判断課題を実施し、分析を行った。 (1)抽象か具象かの直感的判断に、日本語・英語の二言語間で大きな差がないことがわかった。語彙によっては二言語間で差が見られる場合があったが、その原因は、単語が指す意味が言語間で異なること、英語習熟度が低い学習者ほど英単語とそれが指す意味の結びつきが弱く、判断にぶれが生じていることが考えられた。(2)英単語の抽象性判断と可算性判断は相関関係にあり、抽象名詞は不可算、具象名詞は可算と判断される傾向があることがわかった。さらに、抽象名詞の語彙意味カテゴリー(もの、事、関係、状態、動作、達成)が名詞の可算性判断に影響をもたらすかを調べたところ、状態を表す名詞(worry, hope, respect, trust)は不可算と判断されやすいが、その他のカテゴリーではそのような相関は見られなかった。つまり、抽象名詞が可算と判断される場合、その原因はカテゴリーに共通するような性質によるものわけではない可能性が示唆された。最後に、習熟度が高い学習者ほど抽象性と可算性の相関は弱くなり、具象でも不可算、抽象でも可算という判断をするようになることがわかった。(3)適切な文脈が与えられた場合でも、状態名詞は可算として使用されにくいことが明らかになった。また、telicity, durability, punctualityなどに起因する時間的境界の有無が可算性判断に影響を及ぼす可能性は低いこともわかったが、これについてはもう少しデータを増やした上で、統計的に差があるのかどうかを判断する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単語レベルの調査・分析は順調であった。学会発表(中部地区英語教育学会、全国英語教育学会)も行い、国際ジャーナル(Language Learning, Applied Linguistics等)に投稿するため、論文を執筆している。 文脈レベルの調査に際し、実験参加者の英語習熟度レベルを上級に設定する必要があったため、当初予定した人数を確保するに至らなかった。信頼性の高い統計分析をするためにも実験参加者を増やす必要があったため、研究期間を延長し、引き続きデータを収集している。暫定的な実験結果については、American Association for Applied Linguistics (AAAL)で口頭発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
文脈レベルの調査において、参加者の人数を増やし結果を分析し直し、成果をAAAL等の学会で発表する予定である。また、名詞の直感的な可算性判断と文脈における可算性判断に相関があるのかについて、データを分析しているが、まだ学会等で発表していないため、中部地区英語教育学会での発表を検討している。 研究のまとめとして、日本語における名詞の抽象度合い、日英の名詞に対する抽象性と可算性の直感的判断、文脈内での英語抽象名詞の可算性判断を体系的にまとめた論文を書く予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)実験データ収集にボランティアの参加者を募ったため、謝金がかからなかった。海外での学会発表が一回であったため、旅費に充てていた予算を使用しなかった。
(使用計画)学会発表の旅費、論文校閲の謝金、実験の追加参加者への謝金に充当する。
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Research Products
(4 results)