2015 Fiscal Year Research-status Report
日本人学習者の中国語外来語の認識ー音訳表記固有名詞を中心に
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15K16803
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
仇 暁芸 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 講師 (60637635)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中国語教育 / 外来語 / 音訳 / 固有名詞 / 認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本人学習者の中国語外来語の認識難という問題を解決するため、音訳表記である固有名詞に焦点をあて、一定の認識ルールや規則性が含まれる「中国語音訳表記固有名詞を認識するための手引」を作成することを目指している。 これまでの先行研究で明らかになった音訳表記固有名詞認識の手掛かりである113字と文部科学省が定めた小学校の学年別漢字配当表(1006字)の漢字の重なり状態を平成27年度に調べた。その結果、113字のうち、51字(45%)が重なっており、重なっていない漢字は62字(55%)である。さらに最新の「常用漢字表」と照らしあわせ、重なっている51字はすべて常用漢字であることがわかった。なお、重なっていない62字のうち、半分以上の34字が常用漢字である。これらの結果を通して、認識の手掛かりである113字は日本人にとって馴染みのある漢字が多いと言える。また、関連資料を読み、コーパス関係の理解を深めた。 さらに、予定していたコーパスをはじめ、様々なコーパスを見て選定してきた。その結果、今は北京語言大学の中国語コーパス(BLCU Corpus Center、略称:BCC)をより具体的に注目するようになった。その他、二つのデータベースを構築するという考えが鮮明になってきた。一つは新聞を通して、最近の言語使用状況がわかる音訳表記固有名詞が含まれる文章のデータベースであり、もう一つは初級中国語学習者が把握していると思われる典型的な教材に含まれている単語や漢字が入っているデータベースである。 上記のように、平成27年度は主に3つのことを研究してきた。①認識の手掛かりである113字と学年別漢字配当表、日本語常用漢字の重なり状態を調べた。②書籍などを通して、コーパスやデータベースに関する知識を増やした。③関連コーパスの選定作業を続け、新しいデータベースを構築するという考えを持つようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
教育と他の研究課題に費やす時間の配分が上手にできなかったため、本研究に使う研究時間が予定より少なかった。
データベースに関して、既存のものを使うだけではなく、新しく自分で構築することも試みたため、データの選定やデータ入力などで時間がかかってしまった為、当初の予定より遅れることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は①北京語言大学の中国語コーパス(BCC)をはじめとする既存のコーパスで該当漢字の使用状況を調べる。②新しいデータベースを構築する。③ ②のデータベースで該当漢字の使用状況を分析する。④全ての使用状況の分析結果を踏まえ、音訳表記固有名詞を認識するルールをまとめる。⑤日本人学習者用の中国語音訳表記固有名詞を認識するための手引を作成する。 その他、進捗状況にあわせて、研究発表も行う。
言語はいつも生きている。今の中国語の言語使用状況がより反映できる新しいデータに関して、二つのデータベースの構築を考えている。一つは音訳表記固有名詞が含まれている新聞記事のデータベースである。もう一つは初級中国語学習者が把握していると思われる漢字や単語が入っているデータベースである。既存の北京語言大学の中国語コーパス(BCC)を含め、本研究は3つのデータベースを参考することになる。 分析作業を行う際、認識の手掛かりである113字はもちろん、特に日本人学習者にとって馴染みの多い学年別漢字配当表と重なっている51字をより中心的に分析していく。該当漢字がどのような漢字と共に現れ、単語となっているのか。その前後にどのように漢字あるいは単語が現れているのか。これらの問題意識を持ち、特徴を探っていく予定である。なお、品詞の状態も見ていく予定である。 漢字の特徴を分析する際、「一般語彙」と「そうじゃない時」の使い方に特に注目していく。先行研究で唱えてきた「見えないスラッシュ」の存在に関するこれまで筆者の考え方を見直しつつ、認識用のルールや規則性を小分けし、まとめていく。その他、同じ漢字圏であるため、日本人学習者にとって紛らわしいと思われる一部の漢字と中国語の簡体字についても必要性に応じ、説明を加える可能性がある。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたmacのパソコンが見積の結果、安くなった為である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
参考書など書籍の購入で10万円を予定している。調査のための旅費、学会発表などの旅費について、10万円ずつ、合計20万円を予定している。また、5万円をデータ入力のためのアルバイト代とし、音訳表記固有名詞を認識するための手引の作成に関して、15万円を編集・印刷費として使用する予定である。
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