2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16813
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
吉永 匡史 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (20705298)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 古代史 / 律令制 / 軍事力 / 唐代法制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績について、日本古代史と中国唐代史に分けて概述する。 まず日本古代史については、唐制との比較史的視点・手法にもとづき律令国家の軍事構造を考察し、日本の律令法における軍事力の特色を浮かび上がらせた吉永匡史『律令国家の軍事構造』(同成社、2016年)を刊行した。また、中央軍事力とのかかわりから、日本と中国の軍礼の性格についての比較検討を深化させた。軍礼の全体像だけでなく、具体的には日唐の射礼に焦点をあて、唐代における軍礼と律令の対応関係や、中央軍事力と国家儀礼の関係を考察した研究報告を行った(吉永匡史「日唐の射礼と支配秩序―唐軍礼の継受をめぐって―」、「東アジアにおける比較儀礼史の研究」第6回国際セミナー、お茶の水女子大学、2016年8月7日)。 次に中国史については、前年度に引き続き、散逸した唐宮衛令の復原を進め、南衙禁軍の性格について検討を行った。また唐令復原研究の手法やその根拠史料については、『倭名類聚抄』や『令集解』に逸文が残る「唐令私記」の基礎的検討を行い、中華人民共和国北京市で開催された国際研究集会にて報告した(吉永匡史「日本書籍中的唐代法制―為深化唐令復原研究―」、「比較法史・域外之眼・全球史観 中国法律史研究新視野学術工作坊」、中国法政大学、2016年12月10日)。本報告はフルペーパー報告であり、既に研究論文集として公にされているが、これに修正を加えた論文が、次年度中に中国において公刊される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の刊行や研究口頭報告を随時進めており、現在成稿している学術論文も、複数本が次年度中に公表予定である。その他、史料調査・史跡調査も進めており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に準拠しつつ、次年度も研究を推進する。以下、日本古代史と中国唐代史に分けて述べる。 まず日本史については、前年度より進めている日唐軍礼(軍事儀礼)の比較検討や五衛府制の実態的検討を進めるとともに、主に京師周辺における私的武力の形成とその内実についても考察する。 次に中国唐代史であるが、前年度より取り組んでいる唐宮衛令の復原研究や南衙禁軍のシステムにかんする研究を継続する一方で、今年度行った軍礼についての口頭報告を成稿したい。また、皇帝の私的性格の強い律令外の中央軍事力についての考察に着手し、古代日本の事例との比較検討を行いたいと考える。 上記の研究を進めるにあたり、宮城遺跡の実地調査や唐令復原根拠資料の書誌学的調査についても随時実施する予定である。
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