2015 Fiscal Year Research-status Report
幕末維新期日本をめぐる国際関係史の再構築に向けて―東アジア比較・世界史の視点から
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15K16816
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
福岡 万里子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50740651)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 幕末外交 / 日中タイ外交比較 / 初期日独関係 / 初期日米関係 / ドイツの対東アジア政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、明治維新期日本の外交史を,多言語史料に基づき,多極的な国際関係の中で展開した日本外交の軌跡を考察するという原点に立ち帰って再構築することを目的とする。具体的なトピックとしては、プロイセン東アジア遠征団の日本・中国・シャムとの条約交渉とそれに基づく日中タイ外交比較(①),アメリカ初代駐日代表ハリスの対日外交(②)、幕末日本の外交政策論(③)などを予定している。本年度(H27年度)は①について、中独条約交渉の史料解読を進めるとともに、中国外交史関係の文献調査を並行して行った。また研究途上の成果として、以下の論考a, bを執筆した。 a. 「『出使日記の時代-清末の中国と外交』書評―近代日本における「出使日記」現象の不在に関して」(後継「研究発表」欄参照) b.論文「近世近代転換期の日中外交比較へ向けて-プロイセン東アジア遠征団の対日・対中条約交渉(一八六〇~六一)から」(塩出浩之編『東アジア近代における「公論」と「交際」』東京大学出版会、2016/2017年刊行予定) 次いで②に関し、ハリスが来日後の数年間総領事として滞在した静岡県下田市を訪問し(私費)、アメリカ総領事館となった玉泉寺及びハリス記念館、日米和親条約が調印された了仙寺、下田市の地理状況などを現地調査した。下田時代のハリス、初期日米関係に関する諸資料の閲覧と収集ができた他、下田市街と総領事館のあった柿崎の距離感覚などを実地に確認できた。 なお本年度の研究の過程で、上記①②③に加えた副次的なトピックとして、ドイツ語圏ヨーロッパの商人の19世紀後半東アジアにおける貿易活動の実態(④)について、調査を行う必要性が生じてきた。次年度以降、これに関する調査も組み込み、幕末維新期日本をめぐる国際関係の世界史的背景について、考察を深めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度(H27年度)に当初、上記①(プロイセン東アジア遠征団の日本・中国・シャムとの条約交渉とそれに基づく日中タイ外交比較)について、中独条約交渉史料の解読作業を相当程度進めるとともに、シャム独条約交渉の史料などを探訪収集するため、渡独調査を行うことを予定していた。しかし本年度の夏期~秋期に、勤務先にて企画展示「ドイツと日本を結ぶもの―日独修好150年の歴史」が実施され、その関連業務が予想以上に繁忙を極めたことなどから、渡独調査は次年度(H28年度)に延期することとなり、上記の解読作業も想定したほど進まなかった。 ただし上記展示は本研究課題とも関わる内容も相当程度含み、本研究の遂行のために中長期的に資するところは大きかったと考える。また渡独調査を延期した代わりに、上記「研究実績の概要」欄で述べた論考の執筆や、関連する研究報告及び講演を複数回行った(一部を後継「研究発表」欄に記載)。 以上を総じて検討した結果、上述の区分の自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度(夏期の予定)に、前年度に実施できなかった渡独調査を行い、ベルリンのプロイセン枢密文書館などで、プロイセン使節団の対シャム条約交渉史料を始め、上記①に関する史料の調査収集をする。併せて上記④の調査のため、渡独調査に併せてスイスのドイツ語圏地域を訪問する。スイスではまずチューリヒにおいて、幕末明治期の日本で生糸貿易商社を経営したドイツ語系スイス商人ブレンワルトの史料を所蔵/展示するDKSH社アーカイブで調査を行う。さらにルツェルンに移動、研究プロジェクトSilk History since 1800を進めているルツェルン大学教授シュヴァルツェンバッハ氏を訪問し、将来の共同研究の可能性も含め、打合せを行う予定である。 加えてH28年度末までに、上記②の研究に必要なハリス関係史料を収集するため、米国東海岸(ワシントン、ニューヨークなど)の訪問調査を実施する計画である。ハリスの日本滞在中における米国国務省とのやり取りに関する史料は日本国内でも横浜開港資料館などで閲覧・複写が可能であるが、ニューヨークの陶器商・教育委員時代のハリスの関係史料、ハリスの初代米国総領事への採用に関する史料、日本開国をめぐる米蘭折衝に関する史料などは、米国国立公文書館や議会図書館において探訪収集する必要がある。加えて来日前のハリスが創立したニューヨーク市立大学やハリスの生地及び墓碑・教会などを実地見分し、ハリスの伝記の執筆に備える。 このようにH28年度は、本研究の遂行に必要な在外史料の新規発掘に努めるとともに、関連する既存の史料・文献の調査研究を引き続き進める。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、本年度(H27年度)に予定していた渡独調査を次年度(H28年度)に延期したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度(H27年度)に生じた次年度使用額は、H28年度に実施延期した渡独調査、及び新たに必要性が生じたスイスでの調査活動に充てる予定である。
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