2017 Fiscal Year Research-status Report
幕末維新期日本をめぐる国際関係史の再構築に向けて―東アジア比較・世界史の視点から
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15K16816
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
福岡 万里子 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50740651)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 幕末外交史 / 東アジア国際関係史 / 多国間関係 / 戊辰戦争 / 19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は研究課題に関する専門論文2本、書評1本、一般向け記事1本を刊行した。専門学会での研究報告は国際学会・国内学会で1度ずつ行い、一般向け講演を1度行った(「研究発表」欄参照)。これらはいずれも、幕末維新期の日本をめぐる国際関係史の再構築を目指した研究成果の一部である。併せて今後の研究成果発表に向け、以下の海外調査を行った。 ①平成29年6月、イギリス・ノリッチのセインズベリー日本藝術研究所で行われた国際シンポジウムに参加し、幕末明治期に来日し生糸貿易商社を経営したスイス商人ブレンヴァルトに関する研究報告を行った。その後続けてロンドンのイギリス公文書館に移動し、1861年に勃発した江戸の米国公使館付き通訳兼書記ヘンドリック・ヒュースケンの襲撃殺害事件をめぐる英国政府内外の動向について、英国外務省文書の調査を行った。 ②2017年8月,ドイツ・ベルリンのプロイセン枢密文書館及びドイツ連邦文書館を訪問し、(1)1860~61年の日独条約交渉に際する駐日米国弁理公使タウンゼント・ハリスの貢献に感謝してプロイセン政府からハリスに贈られた勲章の授与に関する史料文献調査、(2)1861~62年のプロイセン使節団による対シャム条約交渉に関する史料調査、(3)戊辰戦争期の日独関係に関する史料調査、を行った。 ③2018年3月、米国国立公文書館(NARA)及びニューヨーク市立大学(CCNY)を訪問した。NARAではハリスの下田滞在中における東アジア派遣米国軍艦の動向について米国海軍省文書を調査した。CCNYではハリス日記の翻刻・刊行やハリス関係史料の目録整理などに当たって功績のあった故マリオ・コセンザ教授が残した未刊行原稿の調査を行うとともに、2018年6月~12月に予定するヴィジティング・リサーチに備え、同大学教員らと打合せを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、公務と並行して進める研究課題に関する成果発表と研究調査のため極めて多忙であったが、研究成果を4本刊行するとともに学会発表・講演を3本行うなど、成果も着実に蓄積できたように思われる。今年度行った学会発表や研究調査の成果は次年度以降の研究成果刊行につなげていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、前年度に引き続き、幕末維新期の日本をめぐる国際関係について、外交史と貿易史の両面に目を配りつつ、研究発表・調査を行っていく。特に以下の事項を計画している。 ①幕末明治期の横浜に拠点を置いたスイスの生糸貿易商社シーベル・ブレンワルト社の貿易活動について、ブレンワルト日記を素材に調査してきた申請者とシーベルの書翰を調査してきたスイス・ルツェルン大学教授アレクシス・シュヴァルツェンバッハ教授との共同執筆の形で英語論文をとりまとめ、次年度以降の刊行が予定されているシンポジウム論文集に寄稿する予定である。 ②平成30年6~12月の6ヵ月間、米国のニューヨーク市立大学において在外調査を行い、米国初代駐日代表タウンゼント・ハリスに関する史料調査及び彼を取り巻いた時代環境についての文献・史料・史跡調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
H29年度に行った海外出張調査のうち、H29年8月に実施したドイツ研究調査は、申請者が研究分担者を務める他の科研プロジェクト(科学研究費B「ドイツ日本関係史料による新しい明治日本理解の構築:外交と国家形成」研究代表者:東京大学法学部教授五百旗頭薫)の分担研究課題とも重なっていることから、同科研から旅費の過半の支給を受けた。またH30年3月に実施したアメリカ研究調査は、申請者が代表を務める勤務先機関の研究調査プロジェクトの研究課題と重なっていることから、同経費から旅費の過半を支出した。そのため当初の予定よりもH29年度の使用額が低く抑えられた。 本科研では次年度も在外調査を予定し、かつ最終年度である次年度は交付予定額が過去4年間中最も少なくなることを鑑み、繰り越しはむしろ妥当と考えた。
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