2015 Fiscal Year Research-status Report
鹿児島県の「共通語指導」を通してみる引揚げ児童の戦後社会との接続
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15K16821
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高嶋 朋子 東京外国語大学, 国際日本研究センター, 研究員 (60600442)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 引揚 / 共通語 |
Outline of Annual Research Achievements |
引揚げ児童の言語経験に焦点を充てる本研究では、今年度は鹿児島市鴨池小学校に居住した経験のある引揚げ児童への聞き取り調査を中心に行った。5名のインフォーマントへの初回調査であるため、まず家族が外地へ居住した経緯や引揚までの生活状況いった、研究課題の背景にあたる項目への聞き取りから始め、引揚経験についてと、引揚後の定住先と生活状況、学校生活についてとインタビューを進めた。 引揚げ者の居住が多かった鴨池地区の鴨池小学校は昭和25年創立であり、創立当初に在籍した児童は、周辺他校から転校してきた経緯を持つ。今回の聞き取り調査によって、少なくとも昭和25-27年頃までの鴨池小学校の児童はそのほとんどが引揚げ児童であったこと、転校前の学校では方言をはなす児童が多く、引揚げ児童はそのことばの相異に疎外感を感じていたという証言を得た。次回の調査では、鴨池小学校とその周辺の小学校での言語経験について、更に深く掘り下げた聞き取りを行う予定である。 なお、史料調査に関しては、教育雑誌『鹿児島教育』『鹿児島国語教育』と、加えて当該期の地方新聞のなかで研究課題に抵触する関連記事を収集した。 また、本研究主題に抵触する、鹿児島県における戦後の共通語教育の実態については、奄美大島の名瀬小学校・奄美小学校の事例を中心に資料調査を行った。当時の奄美小学校教員による論文から、テキストを使用した話しことば指導に関する具体的取り組みを確認した。また、名瀬小学校の放送担当だった元教員が保管していた当時のノート・メモ類からは、全国的な潮流に乗った視聴覚教育の取り組みのなかに、話しことば指導を意識していたことが看取された。2校の事例の詳細は研究ノートとして発表したが、鹿児島県の共通語教育は組織的でありつつも、学校や地域による偏りが大きいということがみえてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インフォーマントの都合により、2回予定していた聞き取り調査が1回となったため、研究の進捗に遅れが生じている。ただし28年度中にこの分の聞き取り調査予定を入れている。 また、史料調査においては、同窓会誌や文集などへのアクセスが非常に難しく、年度中には確認することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗に遅れをきたしている聞き取り調査を継続しながら、史料調査についても確認中の個人蔵資史料にアクセスしていく。 具体的には、27年度に着手した鹿児島市鴨池小学校に居住した経験のある引揚げ児童への聞き取り調査を継続し、同窓会にも助力いただき量的調査を行うための準備を整えている。また、鹿児島県における戦後の共通語教育の全体像をつかむために、27年度に確認した奄美大島・名瀬地区での実態を踏まえて、名瀬周辺地域への調査へと拡大していく予定である。 なお、史料調査としては、当初の予定通り同窓会誌や文集などの資料へのアクセスを急ぐと同時に、地域社会における共通語教育や方言に関する態度や認識をつかむため、地方新聞で扱われている教育・共通語・方言に関する記事の抽出にも注力する。
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Causes of Carryover |
27年度に行う予定であった聞き取り調査がインフォーマントの体調問題で中止となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中止となった聞き取り調査を28年度中に延期することになったため、調査の旅費として使用する。 また、聞き取り調査の音声データや書き起こしデータを蓄積するためのHDDなどの物品(消耗品)も購入する予定である。
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Research Products
(2 results)