2016 Fiscal Year Research-status Report
近世地域行政吏の制度的研究―細川家文書と江川家文書の比較検討から―
Project/Area Number |
15K16824
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
今村 直樹 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (50570727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 手永制 / 地方役人 / 代官所役人 / 永青文庫細川家文書 / 江川文庫江川家文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
【史料の調査と分析】 平成28年度は、次の史料群の調査およびデジタルカメラでの撮影作業を行った。1.細川家文書の「口書」および地方役人関係史料 2.熊本県内の個人(旧地方役人家)所有史料 3.江川家文書の代官所役人関係史料 4.静岡県内の個人(旧名主)および旧町役場関係史料 これら史料の分析作業に基づく具体的な成果は次のとおりである。1.近世後期熊本藩の地方役人の成り手(志願者)について、役人を「家業」とする百姓層のほか、自らの身体状況や技能に応じた職業選択という観点から、役人を希望する人びとが広範に存在したことが判明した。2.同時期の韮山代官所における代官所役人の職務分掌のあり方とともに、代官所が地域社会に向けて有する諸種の行財政機能(社会資本整備・金融支援・紛争解決など)が明らかになり、その近代への継承性についても一定の見通しを得ることができた。3.韮山代官所と比較する観点のもと、駿府代官所管内の郡中惣代や、遠州横須賀藩の大庄屋の存在形態に検討を加え、近世東海地方における地域行政の実態について総合的に議論できる見通しを得た。
【研究成果の公開】 以上で得た研究成果について、平成28年度は学術論文の作成と学会発表に力点を置いて発信を行った。学術論文では、幕府代官所の社会的機能を考える目的のもと、近世静岡の領主制と地域社会に関する試論をまとめ、公表した。また、遠州横須賀藩の大庄屋関係史料を調査・分析し、史料紹介の形式でその成果を公表した。公開講演では、昨年に引き続き、韮山代官江川氏を題材とした市民向け講演会を静岡県内で実施するなど、研究成果の社会還元を積極的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は研究成果の社会還元たる講演会や自治体史の執筆に加え、次年度に所属研究機関を変更することになり、引越準備や引継ぎ作業などに追われたことから、研究時間が予想以上に少なくなった。その点で全体の作業にはやや遅れが生じているが、静岡県伊豆地域で旧町役場関係史料を発見・調査し、明治前期における旧韮山代官所の行財政機能の継承性に新たな見通しを得たこと、同じ東海地方の小藩大庄屋制について史料群の整理から理解を深めることが出来た点は、大きな収穫であった。以上を総合的に判断し、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.近世後期熊本藩における地方役人の成り手(志願者)について、具体的に検討を深めて成果を発表する。 2.韮山代官所の行財政機能が明治前期の伊豆地域にどのように継承されたのか、具体的に検討を深めて成果を発表する。 3.韮山代官所役人の存在形態と比較検討する目的から、近世東海地方の地域行政吏に関する事例研究を行い、成果を発表する。 4.これまでの研究における未解決の課題を整理し、それをもとに次期の研究プロジェクト(共同研究)を計画する。
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Research Products
(5 results)