2015 Fiscal Year Research-status Report
大戦間期の日本外交と新四国借款団:日中英関係と「勢力圏」認識の変容
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15K16825
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保田 裕次 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 研究員 (70747477)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本近代史 / 日本政治外交史 / 東アジア国際関係史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、三年間の助成期間の一年目にあたるため、第一に、本研究に関する基礎的作業を遂行した。 大きく、①歴史資料の調査と読解、②研究成果の公表に分けることができる。①に関して、日本国内の歴史資料である外務省外交史料館所蔵「外務省記録」(アジア歴史資料センター上で閲覧、http://www.jacar.go.jp/)、国立国会図書館憲政資料室所蔵「憲政資料」、東京大学経済学部資料室所蔵「横濱正金銀行資料」の収集をし、それらに分析を加えた。新四国借款団と日本との関係に関する基礎的考察を行った。次に、研究協力者の協力を得ながら、中国での史料調査を行った。特に、中華民国初期の歴史資料が所蔵されている中国第二歴史档案館で中華民国臨時政府関連の史料を閲覧、複写した。また、上海図書館では、清朝末期から民国初期にかけての著名な政治家・実業家であった盛宣懐の歴史資料に関する調査も行った。新四国借款団の結成に対する中国側の動きを考察するために、基礎資料を収集した。 ②について、本研究に関する研究内容を、国内・国際の学会で報告をした。笹川日中友好基金日中若手歴史研究者セミナーでは、日本、中国、台湾などの歴史研究者との研究交流を行った。また、鉄道史学会や「20世紀と日本」研究会などでも研究報告を行った。研究代表者が専門とする日本近代史、日本政治外交史、日中関係史のみならず、日本経済史・経営史、中国近代史など隣接分野の学会での発表を行い、多様な視点から議論をすることができた。また本年度には、本研究に関する研究論文が査読付きの学会誌に掲載された。新四国借款団が結成される以前に存在していた六国借款団に関する研究成果であり、本研究を進めていくうえでの前提となる研究成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一に、新四国借款団と日本との関係を考えるうえで、重要な要因であったアメリカ政府・資本家に関する歴史資料の調査を実行した。当初、The National Archives and Record Administration(NARA)で横浜正金銀行ニューヨーク支店、三井物産の在米支店などの史料に関する調査を計画していた。しかし、三井物産在米支店の史料閲覧には先約があったため、十分な調査を行うことができなかった。ただし、NARAの日本関係資料は、横浜開港資料館や三井文庫などの所蔵されている分もあるので、日本で事前にこれらの歴史資料を丹念に調査をしておく必要がある。現在、こうした調査に取り組みつつある。 第二に、研究内容の進展についてである。日本国内の歴史資料に加えて、アメリカで収集した歴史資料の分析を進めている。ただし、本年度にアメリカで収集した資料は本研究に関するすべての範囲を網羅しているわけでは無い。また、歴史資料からうかがえる日本とアメリカの構想や外交交渉の違いに注目することのみならず、新四国借款団以前に存在していた国際借款団との比較を念頭に置いた研究を行っている。 第三に、研究成果の公表についてである。本年度には六国借款団に関する研究成果が公表され、新四国借款団に関する基礎的な考察を行った。さらに現在では、大戦間期における新四国借款団と日本との関係を探るための第一段階として、第一世界大戦終了直後の新四国借款団結成の過程に関する研究を進めている。それとともに、様々な研究会・学会での研究報告を通じて、隣接諸分野から質問・意見を受ける機会を設けるとともに、大戦間期という比較的先行研究が厚い時期の知見・時代感覚を養うことができるように努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
①研究内容の充実を図る。「外務省記録」に加え、未公表資料を含めた日本国内の歴史資料を広く収集する。国立国会図書館憲政資料室所蔵「阪谷芳郎関係文書」、山口県立文書館「田中義一関係文書」などを収集し、大戦間期の日本の対中国借款に関する政策形成過程を実証的に解明する。一方、今年度に引き続き海外での歴史資料の調査を実施する。まずは、NARA(アメリカ)で、横浜正金銀行ニューヨーク支店や三井物産在米支店、Harvard Universiy Baker Libraryで、長い間モルガン商会の支配人を務めたThomas Lamontの資料を調査する。そのことによって、新四国借款団の結成とその後の展開に関する日米双方の動向を明らかにすることができると考える。 ②研究内容の精緻化や研究の学術交流のために、日常的に参加している日本史系の学会にとどまらず、隣接分野の学会での報告を積極的に行う。また、日本国内の学会のみならず、イギリス、中国、アメリカなどの国際学会での発表も行ってきたい。すでに来年度は、British International History Group Conferenceでの報告を行う予定である。本研究に関心を持つ国内外の研究者との交流を深める。 ③国内外の学会誌に研究論文を投稿し掲載を目指す。来年度、第一次世界大戦後期の新四国借款団に関する論文を執筆する予定である。これに加えて、新四国借款団の本格的に東アジア経済的国際協調体制として機能していく過程に関する研究論文の執筆に取りかかりたい。 ④研究全体の実施の方法を方向付ける。今年度は、研究代表者が行う作業がほとんどであった。しかし、研究内容をより充実化させ、今後は悉皆調査などを行ってくことになるため、研究協力者の協力を得ながら、研究上のアドバイスを得るとともに、研究作業への協力が必要となる。
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Causes of Carryover |
本年度、海外では台湾の中央研究院近代史研究所での調査、国内では国立国会図書館憲政資料室での調査を行う予定であったが、様々な事情により、実行するに至らなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、台湾の中央研究院近代史研究所での海外調査を行うとともに、日本国内での調査も継続的に行う予定である。
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Research Products
(6 results)