2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16827
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 徹 京都大学, 文学研究科, 助教 (50612024)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本中世史 / 室町時代 / 荘園制 / 寺社本所領 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地域の領主構成を問う視角から、室町時代における列島の地域性を解明し、それが生じた理由や経緯について、構造的・総合的に把握することを目的とする。初年度は計画の手始めとして、関連史料が膨大な公家・寺社の所領(寺社本所領)に関する情報整理を第一の目的とした。具体的には、一五世紀前半段階での当知行(有効に支配がおこなわれていた)所領が網羅的にわかる寺社本所を抽出・検討し、それらの所領の分布範囲につき確認する作業を進めた。 作業は、関連図書・写真紙焼きの購入、史料所蔵機関への出張等による刊行史料・未刊行史料の検討を中心とし、このうち東大寺領の情報収集については研究協力者の協力を得た。検討の結果、いくつかの寺社本所の所領の状況を把握し、地域差に関する知見も獲得できた。さらにその一方で、既存の自治体史のみでは情報収集が不十分な地域があること、史料が多い東寺領についてはとくに丁寧な検討が必要なこと、禁裏料所の位置づけが当初想定よりも難しいことなど、以後の検討課題も明確になってきた。 また、在京武家領との比較、各地の地域的特色の抽出、列島全体の地域性の構造的把握など、次年度以降に予定している作業につき、前倒しして情報収集をおこなった。近年進展がめざましい東国史研究を、どのように踏まえるのかが今後課題になると考えている。 研究成果としては、南北朝期に寺社本所領をめぐって出された幕府法群についての論考を発表したことが、第一に挙げられる。研究上の混乱の大きい半済の問題を整理し、所領押領の度合いや半済のあらわれ方の地域差を指摘した点は、本研究の基礎となる重要な知見である。加えて、室町時代の大名層の元服・初任官・出家の年齢に関する考察も発表できた。これは直接的に寺社本所領を取り上げたものではないが、寺社本所関係の史料収集が検討の前提として生かされており、本研究の成果を一部含んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記に示したように、各勢力に関する情報収集は順調なペースで進展している。検討のなかで、より丁寧な分析が必要な点も明確になってきたが、それは検討が進んだ結果のことである。寺社本所領の分布に関する論考執筆には遅れがあるが、その反面で次年度以降に予定している作業に関する情報収集が相応に進んでおり、全体としては、おおむね順調に進んでいると判断しておく。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の異動によって、京都大学古文書室の影写本・写真帳を簡単に利用できる立場ではなくなった点など、研究環境に若干の変更が生じた。新たな所属機関の研究費執行のルールを早急に理解し、研究が停滞することのないよう努めていきたい。 2016年度は前年度に引き続いて寺社本所領に関する検討をさらに進めるほか、在京武家領との比較や地域的特色の描出などといった新たな作業もおこなう。これらの作業には、これまで集積した情報が生きてくる部分が大きいが、適宜必要に応じ、関連図書・写真紙焼きの購入、史料所蔵機関への出張等によって、さらなる史料の調査・収集もおこないながら取り組んでいきたい。前年度にみいだされたいくつかの課題について克服する方途を模索すること、成果を論考や学会報告のようなかたちで発表することなどにも努めていく。
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Causes of Carryover |
本年度の研究協力者の勤務時間を当初想定の半分程度としたこと、史料調査に二度しか行けなかったことなどにより、当初の予定よりも研究費の支出が抑えられることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度分として請求した分と合わせて、追加調査のための旅費、関連図書・写真紙焼きの購入費などに充てることができればと考えている。
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