2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K16828
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 翼 大阪大学, 文学研究科, 助教 (70748970)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日宋交流 / 日元交流 / 日明関係 / 元寇 / 倭寇 / 禅宗 / 東アジア海域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下に挙げる①~③に従事した。 ①、平安時代中期における貿易管理体制の変容の解明と、中世的な貿易システムの形成過程の再検討。②、モンゴルの東アジアにおける戦争がもたらした東アジア海域世界の秩序変容に関する論点整理と、その日元交流への影響の検討。③、日本の中学校・高校教科書における東アジア交流史関係記述、ならびに英語圏における日本中世史理解の調査。 ①については本来、日宋/日元交流と日明関係史の架橋を試みる本研究の主たる検討時期とは重ならない。ただしそれは、これまでの私見をふくめ従来の研究では、中世的な貿易システムを論じる際には12世紀後半を起点とし、それ以前との断絶を強調してきたためであった。しかし、9世紀~12世紀の貿易管理体制を通時的に検討した結果、11世紀に始まる貿易管理体制の変容が14世紀まで続く貿易システムの起点であるとの見通しを得た。これにより、本研究の射程は大きく広がったといえる。また、その成果は論文として刊行した。 ②については、モンゴル帝国による戦争が陸域・海域における交流を促進させたという近年の理解をふまえ、東アジアに即して再検討をおこなった。その結果、日中交流に関していえば、戦争がもたらした交流へのダメージは過小評価できず、またモンゴル帝国の東アジア覇権が形成されるなかで日本が政治的にそれに包摂されなかったことが、「日本」「倭」に対するネガティブイメージの一因として見逃せないことを明らかにした。 ③については、研究成果を社会的、国際的に発信していくにあたり、踏まえるべき課題を整理・共有する意味で不可欠な作業である。中学校教科書記述に関しては、論文化を進めており、高校教科書に関しては、高大連携歴史教育研究会での活動を通じた情報収集を行った。英語圏に関しては中間報告をかねて、国際ワークショップでの発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初予定していた入元僧に関する史料収集・整理には遅れが出ているが、その原因は主に以下の二つである。 第一に、計画には含めていなかった9~12世紀に関する研究に従事したこと。しかし、これについては、結果的に研究全体がカバーしうる射程の拡大につながったと肯定的にとらえている。 第二は、国際会議・ワークショップに参加する機会が当初の予定より多くなり、その準備に時間をあてたことである。ただし、これについても、研究の国際発進力の充実化のためには有益であり、また論点を整理し、次年度以降の研究課題の明確化には大きく寄与するものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には、2015年度に引き続き、入元僧関係の史料収集・整理を中心に研究を進めるほか、鎌倉後期~南北朝時代の入元僧およびその母胎をとりまく政界・仏教界の動向の把握につとめる。また、英語圏における日本中世史・海域アジア史研究の現状と、それをふまえた論点の提示を可能とするための基盤作りに従事する。なお、社会貢献に関しては、高大連携歴史教育研究会のネットワークを活用しながら、大学・高校の双方の現状についての認識を深めることにつとめる。
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Research Products
(9 results)