2015 Fiscal Year Research-status Report
出土文字資料を用いた6~7世紀地方支配制度の実態的研究
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15K16834
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鈴木 正信 早稲田大学, 総合研究機構, 招聘研究員 (30538335)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地方支配制度 / 出土文字資料 / 国造 / 部民 / 木簡 |
Outline of Annual Research Achievements |
6~7世紀の地方支配制度には国造制・部民制・屯倉制がある。しかし、これらの相互補完的な関係性については定見が得られていない。それは史料的制約のために、列島内に設置されたおよそ135の国造のうち、いかなる氏族が国造に任命されたのかが特定できていないケースが約40%を占めていることに起因する。先行研究ではこうした国造の実態を留保したまま、地方支配の枠組みを論じてきたのである。そこで本研究では、編纂史料・古文書に加えて出土文字資料を活用することで、国造に任命された氏族をこれまでより高い確度で特定し、そのウジ・カバネの多様性・偏在性の分析を通して、国造制・部民制・屯倉制の実態的な解明を試みる。かかる分析視角から、平成27年度には以下(1)~(4)の作業を実施した。(1)編纂史料と古文書から国造・部民に関する史料を収集した。編纂史料は『国造本紀』『天孫本紀』『古事記』『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』『風土記』『新撰姓氏録』など、古文書は『大日本古文書』などを対象とした。作業は刊本や注釈書の総めくりのほか、「奈良時代古文書フルテキストデータベース」(東京大学史料編纂所)などを利用して行った。(2)出土文字資料の集成や発掘調査報告書などから、国造・部民に関係する出土文字資料を収集した。『飛鳥藤原京木簡』『藤原宮木簡』『平城宮木簡』『平城京木簡』『木簡研究』『日本古代木簡選』『評制下荷札木簡集成』などを対象とした。作業は報告書等の総めくりのほか、「木簡データベース」(国立奈良文化財研究所)などを利用して行った。(3)以上の作業で収集した関係史資料を整理し、データベースの基礎となるテキストデータを作成した。(4)以上の作業過程で得られた考察結果を踏まえて、学会報告を7回(うち招待講演を3回)行い、論文5本を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は(1)編纂史料・古文書の調査、(2)出土文字資料の調査、(3)データベースの構築・公開、(4)国造制の実態の再検討、の実施を計画した。このうち(1)・(2)は特に瀬戸内・北陸・東海地方の国造・部民を中心に関係史資料を収集した。(3)は上記(1)・(2)の作業で得られたデータを整理し、テキストデータを作成した。(4)は平成28年度に実施予定であった計画を前倒しして実施し、学会報告を7回(うち招待講演を3回)行い、論文5本を執筆した。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28~29年度は、(A)国造に任命された氏族の特定、(B)国造制の施行過程の検討、(C)ウジ・カバネの多様性・偏在性の検討、(D)国造制・部民制・屯倉制の関係性の検討を実施する。このうち(A)では、平成27年度の(3)で収集・整理したデータによれば、約10の国造に関して従来知られていなかったウジ・カバネを記した可能性がある出土文字資料が確認されている。それらを中心に検証作業を行い、さらなる博捜を進める。(B)では国造制の全国一斉施行説と東西段階施行説の比較を行う。(C)では国造制の内実とウジ・カバネの多様性・偏在性の関連性を検討する。以上(A)~(C)を総合して、国造制の実態を解明する。さらに(D)では、各地方に国造・部民・屯倉が設置された先後関係と互いに与えた影響を考察することで、6~7世紀における地方支配制度の全体像の見通しを示す。研究成果は学会・研究会で報告し、そこで得られた知見を含めて論文を執筆し学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成27年度に実施予定であった研究内容(編纂史料・古文書の調査、出土文字資料の調査、データベースの構築・公開)の作業時間を調整し、平成28年度に実施予定であった研究内容(国造制の実態の再検討)を一部前倒しして平成27年度中に実施したため、研究図書・発掘調査報告書等の購入が予定よりも若干少なくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記使用額については、次年度の物品費(研究図書・発掘調査報告書等の購入費)として使用することを計画している。
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