2016 Fiscal Year Research-status Report
地域メディアを利用した近代日本地域社会史研究の新地平-『北桑時報』を素材に-
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15K16835
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
吉岡 拓 恵泉女学園大学, 人文学部, 助教 (50733309)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 北桑時報 / 若狭 / 鯖 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究計画は、弓削自治会館にて調査を行うこと、また可能であれば井川市太郎の個人文書の所在調査の実施、以上の2点であった。 弓削自治会館の調査は2016年9月に実施した。同館での史資料の残存状況についての聞き取りと探索作業を行ったが、目立った成果はあげることができなかった。井川市太郎の個人文書については、同氏の子女に面会し史料の残存状況などについて話を伺ったが、文書類については特に残ってはいない、とのことであった。 本研究課題が検討の主要なフィールドとする北桑地域(旧丹波国)は、北は福井県小浜市(旧若狭国)、南は京都市街(旧山城国)に接し、北部(現南丹市美山町)と南部(現京都市右京区京北)ではその文化が著しく異なるということが以前より指摘されている。しかし、上にも述べたように両地域はおよそ140年にわたり同一の行政区画に存在してきたという歴史的事実がある以上、美山・京北には共通する文化も多く見られるものと考えられる。以上のような発想から、福井県小浜市(旧若狭国)から京都市街までを南下し、美山・京北両地域の文化的共通性と断絶性の両面についてのフィールドワークを行った。 調査の結果、①若狭から京都の間には両地を往還するための小規模な街道が網の目のように張り巡らされていたこと、②「美山・京北文化的断絶」論は両地域の間を流れる川の存在を重視したものであるが、①に述べた状況がある以上、川の存在だけから文化の断絶を強調するのには無理があり、事実両地域には祝事の際には鯖寿司を食するという文化が共通して存在していたこと、③近代に入ると美山・京北地域と山を隔てて接する亀岡・園部地域に鉄道が走ったことから、美山・京北地域の人々の亀岡・園部地域への移動が活発となり、その結果後者の文化が小浜や京都の文化以上に影響を与えるようになってくること、などが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フィールドワークの実施により、研究の前提となる重大な知見を得られたことは大きな成果である。ただし、交付申請書に記した研究課題に弓削自治会館や井川市太郎の個人文書に関する調査については、十分な成果をあげることができなかった。以上の点から、28年度の進捗状況については当初想定していたよりも遅れている、と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度、2016年度の2年間に実施した調査により、井川市太郎に関する史資料は現状で可能な限り収集できたと判断する。よって本年度は、同史資料の分析と論文の作成を中心作業とする。
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Causes of Carryover |
2015年度からの繰越金が516,360円あり、2016度はその繰越金を利用してフィールドワークを実施した。結果として2017年度への繰越金が10,000円強発生してしまったが、課題採用時の2016年度直接経費が700,000円である中で実支出額が1,203,613円となったことを考慮すれば、繰越金の発生が研究遅滞によるものではないことはあきらかであると考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文献購入費に充当する。
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