2015 Fiscal Year Research-status Report
近世・近代移行期に関わる大名家臣(士族)家文書の基礎的調査と研究
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15K16838
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
藤方 博之 国立歴史民俗博物館, 国立歴史民俗博物館, 外来研究員 (40727674)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 日本近世史 / 近世近代移行期 / 家族史 / 家 / 武家社会論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、佐倉藩堀田氏家臣の4家を対象とし、史料整理を行ったうえで、(1)生活実態、(2)「家」観念、(3)周辺地域との関係といった切り口から、各家が近世・近代移行期をどのように経験したかを分析し、当該期の「家」の実像を追究することである。 近世から近代にかけて、「家」はいかなる変容を遂げたのか。従来、近代「家」制度は、近世武士の「家」を範型に再編したもの、という指摘がある。この適否を検討するためには、従来から研究蓄積のある制度史のみではなく、個別の「家」に焦点を当て、各家の史料から実証的に近世・近代移行期における実像を究明することが必要である。限られた事例からではあるが、本研究を通じて、「家」の変容を明らかにするための素材と論点を提起することを目指す。 当該年度は、分析対象とする4家の家文書の整理作業に集中した。4家のうち、比較的数量の多い熊谷家文書については、すでに申請段階から目録作成作業に着手している。同家文書については、当該年度中に完了させることを目指した。また、他の3家については、できるだけ整理作業を進める計画であった。 これら4家の史料整理は、関係史料調査において豊かな経験をもつ、佐倉市役所市史編さん担当の全面的な協力を得て、目録完成に至った。このうち熊谷家文書については、原本校合によって作成した目録の精度を上げ、史料翻刻・解説をも含めて一書とし、『佐倉市飯野町 熊谷家文書目録・調査報告』として刊行することができた。 以上の作業のほか、佐倉藩飛地領があった出羽国村山郡(現・山形市)においても、史料整理を3回実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、分析対象とする佐倉藩士4家の家文書を整理することを計画していた。 このうち比較的数量の少ない3家については整理作業を終え、目録を完成させることができた。 また、もう1家の熊谷家についても整理作業・目録作成を終えた。さらに、原本校合によって作成した目録の精度を上げ、史料翻刻・解説をも含めて一書とし、『佐倉市飯野町 熊谷家文書目録・調査報告』として刊行することができた。同書の刊行は、翌年度に計画していたものだが、集中的な作業遂行により、計画より早く刊行に至ったものである。同書中の解説では、明治期における熊谷家の生活実態について論じた。 以上の作業とともに、補足的な調査として、藩主・堀田家文書の読解と、飛地領のあった出羽国村山郡(現・山形市)における史料調査も実施した。 これらの成果により、当該年度の研究は当初の計画以上に進展したものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに整理を行った、旧佐倉藩士4家の家文書の読解を進める。その際、本研究が着目する(1)生活実態、(2)「家」観念、(3)周辺地域との関係、といった切り口から、注目すべき史料を抽出し、分析を進める。 以上の作業とともに、補足的な作業として、藩主・堀田家文書の分析と、飛地領の史料調査(山形市)についても、前年度から継続して実施する。
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Causes of Carryover |
成果報告書(熊谷家文書目録)刊行を当初の計画より前倒しして実施したことにより、使用計画を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査のための旅費、書籍購入費のほか、史料分析データの整理作業に関わる謝金、マイクロフィルム版堀田家文書の購入を予定している。
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