2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16840
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Research Institution | Gangoji Institute for Research of Cultural Property |
Principal Investigator |
服部 光真 公益財団法人元興寺文化財研究所, 研究部, 研究員 (00746498)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 三界万霊供養 / 三界万霊木牌 / 敵味方供養 / 普門寺(愛知県豊橋市) / 円成寺(奈良県奈良市) / 本興寺(静岡県湖西市) / 木簡 / 日本中世地域社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本中世における戦死者供養および三界万霊供養の事例を、研究文献、自治体史をはじめとする史料集等によって探査した。その際、歴史学のみならず、仏教学、美術史学、民俗学などの研究文献も含めて対象とし、先行研究において取り上げられた個別事例を収集するとともに、研究の枠組みを構築するために諸研究における問題意識、研究状況を確認した。その成果について「三界万霊木牌の史料的意義」(奈良歴史研究会5月例会)、「三河国普門寺史料と研究の現段階」(第51回「ムラの戸籍簿」研究会例会)の口頭発表を行った。最終年度刊行の報告書に掲載するために網羅的な事例収集を継続している。 16世紀以前に遡る三界万霊木牌を所蔵する普門寺(愛知県豊橋市)、円成寺(奈良県奈良市)、本興寺(静岡県湖西市)については集中的に調査を行い、現物調査および同時代史料の調査を行った。 普門寺では中世後期を中心とする古文書・聖教類を調査し、中世山寺研究の中での三界万霊供養の位置づけを検討した。その成果の一部として「中近世移行期における普門寺復興と三遠国境地域」(『地方史研究』第377号)などを執筆し、「ムラの戸籍簿」研究会の三河巡見を案内して中世村落史、地域社会史研究者との意見交流を行った。 円成寺では現物資料と同時代史料に関わる調査をするとともに、納骨信仰を含む大和国内近隣地域における地域社会における信仰や供養の社会史的背景を検討した。 本興寺では中世後期から近世初頭の史料調査の結果、施餓鬼会に関わる文献などを見出し、寺院の地域社会への定着に際しての共同供養の意義を検討するための足掛かりを得た。関連する八幡神社所蔵資料も調査し、未紹介の16世紀の棟札を含む64点の木札資料を見出し、その成果を『湖西の文化』第44号に発表して周知を図った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の第一段階として重点的に行った事例収集と史料調査については、当初の計画に沿って行うことができている。史料調査の成果の一部は、史料紹介や、研究会の現地見学会にて報告することができた。 また、事例収集、史料調査を基礎とする考察の深化については第2年度以降の課題だが、口頭発表によって大枠の基礎を構想することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
事例の収集と、個別事例の考察深化とによって、最終年度の研究のまとめに向けて研究を推進していく。 事例収集については、引き続き、史料集などに基づき関連資料の探査を継続する。今年度は近畿地方、中部地方を中心に検討したが、他地方を対象に網羅的収集を進める。 重点的に調査してきた普門寺、円成寺、本興寺の各事例については、それぞれの三界万霊供養の背景と地域社会史の中での位置づけを、調査した同時代史料によって明確にし、論文として成果を公表していく。
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Causes of Carryover |
年度末(3月25日)に論文抜き刷り等を研究者に郵送して意見と情報提供を求めた際、当初は定形外郵便での郵送を見込んでいたが、内容物の重量・厚さから、割安の手段(レターパックライト)での郵送が可能であることが判明したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度末刊行の『湖西の文化』44号を関係者に郵送する必要があるため、主に文献複写と郵送費に充てる費目「その他」の1万円に加えて使用する。 関連文献を購入する物品費15万円、現地調査や図書館・史料館への調査に充てる当初の旅費24万円については変更はない。
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