2017 Fiscal Year Research-status Report
近世後期・幕末維新期日朝間における海外事件情報流通の研究―対馬藩宗家史料を中心に
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15K16842
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
守友 隆 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (60610847)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 朝鮮通信使 / 文化度通信使 / 小倉藩小笠原家 / 小笠原文庫 / 大韓民国国史編纂委員会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度実施した研究は、勤務先博物館の業務に関連するもの、具体的には文化度通信使に関するものである。 文化度通信使において、幕府から対馬に派遣された上使は小倉藩6代藩主小笠原忠固である。忠固の先祖小笠原忠真(忠政)は、寛永9年(1632)豊前国小倉15万石の藩主となった。譜代大名のなかでも2、3番目の石高である15万石を与えられた小笠原氏は、有事の際に譜代諸藩の主力軍となることが想定されていたことは想像に難くない。実際、島原・天草一揆において譜代藩の主力軍となっている。そのことは、近世後期の文化度通信使においても同様であった。武具を携えた1200名余りの行列を組み、小倉から江戸、江戸から対馬に赴いた。そして国書交換後、江戸に赴き復命した。多人数での往復が可能であったのは大身であったことによる。さらに小倉藩は、副使の脇坂安董の龍野藩と異なり、自藩の船を中心とする船団を組み、小倉と対馬を往復した。忠固はじめ小倉藩には「日本国」の威信を示す船団・行列を組み対馬に赴くという、ある種の軍役での活躍が期待されていたと評価できる。 平成29年10月7日から同年12月3日の会期で、勤務先博物館で特別展「小笠原忠真展」を担当した。近世前期の展覧会であったが、近世後期の日朝外交、すなわち文化度通信使において小倉藩小笠原家が重要な役割を果たす下地が、初代忠真のときに作られていたことを、錦陵同窓会所蔵「小笠原文庫」の史料、「川御座船十歩之一図」(延享年間〔1744~48〕)、小笠原忠固書契写(文化8年(1811)6月付け)、「御当家七五三」(元禄16年〔1703〕1月)などから紹介した。これらの史料調査は、特別展史料調査ではなく、科研史料調査による。 本年度末には韓国国史編纂委員会で、従来調査したもの以外の新たな幕末の対外事件情報に関する史料、文化度通信使の史料を調査した。その分析は次年度に行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
勤務先博物館の特別展業務に忙殺され、本研究課題を進める上での調査・研究がほとんど実施できなかった。また学術雑誌への投稿、学会発表ができなかった。本年度が当初研究の最終年度であったため、研究期間の延長を申請し、本年度の遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は本年度が最終年度であったが、上記の通り研究の遂行が著しく遅れたため、次年度までの延長を申請し、許可された。そこで、これまでの対馬宗家文書所蔵機関での調査の不足分を追加実施した上で、学術雑誌への投稿、学会での報告、史料集の作成、それから4年間を通じての研究成果の報告書を作成することにより、本研究課題の研究成果のまとめとしたい。
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Causes of Carryover |
本年度の史料調査のための出張が実施できなかったため。また、本年度が当初計画では本研究課題の最終年度であったため、史料集や成果報告書等の印刷費を計上していたが、それを執行できなかったため。次年度にそれらを実施する予定である。
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Remarks |
2015年度までの展示実績・研究業績のみで、2016年度以降のものが掲載されていない。2016年度以降のことについて追加・更新されていない。 研究発表図書覧にある『最後の戦国武将 小倉藩主 小笠原忠真』(2018年5月発行予定、北九州市立自然史・歴史博物館)は同館予算での発行であり、本課題調査研究成果の一部を同展覧会・報告書で紹介している。
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Research Products
(2 results)