2018 Fiscal Year Annual Research Report
A study on exchange information about incident at foreign countries between Japan and Korea in the 19th century
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15K16842
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Research Institution | Kitakyushu Museum of Natural History and Human History |
Principal Investigator |
守友 隆 北九州市立自然史・歴史博物館, 歴史課, 学芸員 (60610847)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 対馬宗家 / 風聞 / 情報ネットワーク / 対馬藩田代領 / 尊王攘夷 / 清・朝鮮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に実施した研究の成果として、長崎県立対馬歴史民俗資料館所蔵「宗家文庫」のうち、記録類Ⅲ・風聞帳と分類された古文書20点を史料紹介したことが挙げられる。紹介のための解読・分析の過程で明らかになったのは次の通りである。①風聞帳20点のうち1点は享保期のものだが、残りは文久元年(1861)から明治3年(1870)頃のもので、幕末期の国内事件情報に関するものである。②作成されたのは飛び地の肥前国田代領と考えられる。また、情報源は長州藩や久留米藩の尊王攘夷派の人物である。③先行研究で明らかにされている他藩留守居、「御出入御坊主」、「御館入与力・同心」といった人物だけでなく、藩士の「私」的な交流、すなわち尊王攘夷派の人的ネットワークから多くの情報が入手されている。さらに対馬藩御用達商人からの「注進」情報も注目される。 また、慶應義塾図書館蔵「対馬宗家文書」のなかに「御沙汰書風説書」という43点の「御沙汰書」・「風説書」を「表御書札方」が合綴したものがある。「宗家文庫」の風聞帳と同文のものも一部あり、内容は同じく幕末期の国内事件情報に関するものである。そのなかには対馬藩の京都留守居である樋口謙之亮が収集、伝達を受けたものがある。 対馬藩の情報流通において特徴的な清・朝鮮情報は、一件記録としてまとめるということはほとんどなかった。ただ、「諸方御内容往復書状扣」からは、国元・江戸家老等の往復書状では、朝鮮情報が多く記されていることが明らかになった。倭館で入手した対馬藩の清・朝鮮情報は、幕府・明治新政府に対しては一部上申されている。そして、対馬藩士大島友之允(正朝)から長州藩士木戸貫治(孝允)には朝鮮情報が伝えられているが、これは「公」的というよりは「私」的なものと考えられ、さらなる検討を要する。他藩との情報交換のなかで清・朝鮮情報が積極的に伝えられることはほとんどなかったようである。
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Research Products
(2 results)