2015 Fiscal Year Research-status Report

「イスラーム主義」時代のオスマン帝国と非ムスリム：アルメニア人の事例を中心に

Research Project

Project/Area Number	15K16846
Research Institution	Osaka City University
Principal Investigator	上野雅由樹大阪市立大学, 大学院文学研究科, 講師 (10709538)
Project Period (FY)	2015-04-01 – 2019-03-31
Keywords	オスマン帝国 / アルメニア人 / 総主教座 / 特権 / アブデュルハミト2世
Outline of Annual Research Achievements	本研究は、19世紀末から20世紀初頭のオスマン帝国において、キリスト教徒やユダヤ教徒の領分をめぐる制度的枠組みがどのように機能したのかを明らかにすることを目的としている。こうした目的を達成すべく、研究の初年度にあたる平成28年度には、研究の前提となる19世紀中葉の変化を確認すること、そして19世紀末以降の史料を精査・収集することに従事した。前者に関しては、これまでの自身の研究から得られる情報をまとめなおし、キリスト教徒やユダヤ教徒の領分を論じるために、「特権」や「宗教」、そしてそれらとの関連で「政治」といった用語が1850年代以降のオスマン帝国において用いられたことを明らかにした。その成果は論文をまとめ、Journal of the Economic and Social History of the Orientに投稿した。また、主要史料であるアルメニア文字のトルコ語新聞についてその性格をまとめ、今後の研究の基盤とすべく、Garabed Panosianという人物の出版活動について論文をまとめ、Middle East Studiesに投稿した。史料収集に関しては、12月から1月にかけてイスタンブルで行い、主に首相府オスマン文書館でオスマン帝国の行政文書を調査した。その結果、19世紀末以降に関しても、それ以前からの枠組みが同じように機能し、オスマン帝国政府とキリスト教徒やユダヤ教徒との領分をめぐって様々な議論がなされていたことを示す数多くの文書が見つかった。また、帝国政府内でキリスト教徒やユダヤ教徒に関わる諸事を管轄する部署に関しても、情報収集を行うことができた。調査後は、これら文書を一点ずつ読解し、まとめる作業に移行した。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 初年度には、史料の収集と読解を主な課題として計画していた。史料収集のうち、アルメニアでの調査に関しては職務等の事情により予定通り行うことはできず、来年度以降に持ち越すこととなった。その一方で、トルコでの調査に関しては予定通り行い、期待していた以上に多くの文書を発見することができ、これら文書史料をふんだんに用いる形での本研究の可能性について、手応えを得ることができた。また、当初は初年度の成果発表を予定していなかったが、英語論文を２本、投稿し、掲載決定通知を得ることができた。
Strategy for Future Research Activity	トルコで調査が必要な文書の量が膨大であることを受け、今後は、これら文書史料の収集と読解により多くの時間を割く必要に迫られると思われる。その反面、アルメニアでの史料調査に関しては、トルコにおいてほどの成果が期待できないこともあり、当初の予定ほどには行わず、研究の方向性を見直す可能性を考える必要がある。