2017 Fiscal Year Research-status Report
「イスラーム主義」時代のオスマン帝国と非ムスリム:アルメニア人の事例を中心に
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15K16846
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
上野 雅由樹 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (10709538)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オスマン帝国 / アルメニア人 / 司法改革 / 特権問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の三年目にあたる平成29年度には、19世紀末のオスマン帝国におけるキリスト教徒の宗教的特権に関して、一昨年度にトルコで調査したオスマン帝国の行政文書と昨年度にアルメニアで調査したアルメニア語新聞史料の読解と分析、それに基づいた研究の英文でのとりまとめを重点的に進めた。これにより、イデオロギーとしてイスラームを重視するようになったとされる1880年代以降のオスマン帝国において、キリスト教徒やユダヤ教徒といった非ムスリムの処遇でもそれ以前の時代から続く一定の配慮が継続していたことを示す情報を多数、得ることができた。また、1880年代と1890年代に生じたキリスト教徒とオスマン帝国政府の交渉では、キリスト教徒諸集団が他の集団の動向をいかに参照し、それをもとに権利主張をしていたか、そしてこうした傾向が、オスマン帝国政府がキリスト教徒諸集団の動きを一括して捉える傾向をいかに強めたのか、そのなかでキリスト教徒の有力者層はどのような役割を期待されたのかについて、有益な情報を得ることができた。また、彼らが同じ非ムスリムだけでなくムスリムとの対等性も意識した議論を展開していたことについても情報を得ることができ、予想された以上の興味深い事例を蓄積することができた。こうして得られた情報をもとに、成果の一端は、2018年1月に大阪市立大学で開催された研究会での研究発表と、2018年2月に出版された和文論文集にて公にすることができた。また、並行して英語での論考執筆を地道に進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、研究の基礎となる史料収集を順調に進め、その読解からは期待された以上の興味深い情報を数多く得ることができている。それだけにその成果はなるべく国際的に発信していきたいと考えており、成果の取りまとめに時間をかけてよりまとまった形で行うようにしたいと考えている。とはいえ、平成29年度内には公表にいたらなかったものの、そのための準備も整いつつあり、研究の最終年度に入る現段階で十分な進捗を見せていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、本研究はこれまで順調に進捗しており、今後は、トルコでの補足的な史料調査を行うほか、研究のとりまとめに注力する。
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Causes of Carryover |
当初の予定では史料調査を行うことを予定していたが、平成27、28年度の調査で期待された以上の成果を得ることができたため、平成29年度には史料調査を行う必要がなくなり、次年度使用額が生じた。平成30年度にはこれと当初の請求分をあわせた額を、史料調査旅費および英文校正費に充てることを計画している。
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