2016 Fiscal Year Research-status Report
16-18世紀の東地中海世界における自然環境と都市社会
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15K16849
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
澤井 一彰 関西大学, 文学部, 教授 (80635855)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自然災害 / 環境史 / 東洋史 / 地中海世界 / オスマン朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の二年目にあたる平成28年度は、前年度に引き続いてイスタンブルにある首相府オスマン文書館における一次史料の調査を夏期に予定していた。またこの時には、現地の史跡調査に加えてイスタンブル大学において国際シンポジウムを開催する予定であった。しかし、2016年6月にアタテュルク国際空港で爆破テロが起き、7月にはイスタンブルとアンカラにおいて大規模なクーデタ未遂事件が発生するに及んで、残念ながら中止の決断をせざるを得ない状況となった。 このため、夏期には行き先をマケドニアとギリシアおよびハンガリーに変更するかたちで、史料と史跡の調査を実施することになった。もちろんトルコ共和国の情勢が落ち着き始めた2017年3月には、短期間ではあったがイスタンブルの首相府オスマン文書館とパリの国立図書館を訪問し、一次史料の調査・収集を実施した。これらの史料調査によって、本研究課題に関連する史料をデジタルカメラで撮影し、あるいはCD-ROMに焼き付けるかたちで持ち帰ることができた。同時に、前年度に引き続いて、トルコ共和国で出版された多くの関係書籍を購入し、日本に郵送した。 研究成果の発信としては、2016年11月にロンドン大学の歴史研究所で開催された国際シンポジウムにおいて、16世紀後半のイスタンブルにおける自然災害について英語で報告したことをはじめ、前年度にギリシャのイオニア大学において行った英語での報告を活字にして雑誌Mediterranean Worldに掲載することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の「研究実績の概要」でも述べたように、トルコ共和国で相次ぐテロとクーデタ未遂が発生したことによって、夏期にイスタンブルにおける史料調査や国際シンポジウムの開催ができなくなったことは研究活動にとって痛手となった。 しかし一方で、この予想外の事態にともなって、これまで行うことができなかったマケドニアやギリシャの西トラキアあるいはハンガリーにおいて、史料および史跡調査を実施することが可能になったことも事実である。また、こうした研究活動から得られた成果の一部は、早速2016年11月に東京で開催された東欧史研究会による研究集会に招かれた際に行った研究発表において、これまで交流する機会が少なかった東欧史研究者たちの前で披瀝することができた。今後、東欧を専門とする研究者たちとの共同研究を行う基礎をかたちづくることができた点は、本研究課題にとっても大きな進展であったといえる。 以上の理由によって、「現在までの進捗状況」を(2)おおむね順調に進展している。とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、以下のようなものを予定している。 繰り返しになるが、夏期に予定していたイスタンブルの首相府オスマン文書館における史料調査が中止となったため、これを補うべく、同文書館において今年も史料調査を実施する予定である。一方、イスタンブルや近隣都市における大規模な史跡調査は、現地の情勢を踏まえるといまだに難しいと考えられることから、トルコから研究者を招聘して情報の共有を行うことも検討する。 また当初の研究実施計画においては平成29年度に予定されていたロンドン大学における国際シンポジウムが平成28年度に実施されたため、今年度は史料調査もロンドン以外の地域(イタリアを予定)において行う。 研究成果の報告としては、すでに1660年のイスタンブル大火に関係する論文をはじめ複数の研究論文を準備しているほか、冬には他の科研(基盤研究B「中近世地中海史の発展的研究:グローバルな時代環境での広域的交流と全体構造」研究代表者:亀長洋子学習院大学教授)とも合同で東北学院大学で開催されるシンポジウムにおいてコメンテーターをつとめる予定である。
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Causes of Carryover |
夏期に予定していたトルコ共和国への渡航が中止されたことに伴い、その際に現地で実施することを予定していた最新の研究書の購入が、年明けにずれ込むこととなった。現地の情勢や勤務校の事情から、3月にようやくイスタンブルを訪れることができたが、その際に購入した書籍は郵送の関係で4月中旬になってようやく到着した。そのため、検品や経理処理も含めて、上記の金額が次年度使用額というかたちを取らざるを得なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上の「理由」でも記したように、すでに3月に次年度に繰り越された使用額を上回る金額の書籍をイスタンブルで購入しており、検品も完了させた。これらについての残りの経理処理が終われば、平成28年度からの繰り越し金額を全額を使い切ったことになる。 平成29年度の配分額については、「今後の推進方策」にもあるように、夏期にトルコ共和国のイスタンブルやイタリア周辺地域などにおいて実施する史料および史跡の調査に使用する。また、これらの調査に際して、現地で渉猟する関連資料の購入費と日本への郵送費にも充当される予定である。
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Research Products
(7 results)