2017 Fiscal Year Research-status Report
16-18世紀の東地中海世界における自然環境と都市社会
Project/Area Number |
15K16849
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
澤井 一彰 関西大学, 文学部, 教授 (80635855)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 自然災害 / 環境史 / 東洋史 / 地中海世界 / オスマン朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の三年目にあたる平成29年度は、5月にイスタンブル大学で開催された第9回国際トルコ海上商業史シンポジウムにおいて、研究成果の一部をトルコ語で報告した。毎年、開催地を変えながら継続的に開かれてきた同国際シンポジウムにおいては、トルコをはじめ、欧米からの多くの参加者と研究上の情報交換を行い、交流を深めることができた。 現地調査としては、9月に約10日間をかけて、前半においては主としてモンテネグロにおいて、後半においてはイスタンブルにおいて史料と史跡についての現地調査を実施した。同時に、前年度に引き続いて、トルコ共和国で出版された多くの関係書籍を購入し、日本に郵送した。 4年間の研究期間も後半に差し掛かったため、研究成果の発信にも時間と労力とを費やした。まず口頭発表としては、上述の第9回国際トルコ海上商業史シンポジウムのほか、12月に東北学院大学ヨーロッパ文化総合研究所が開催したシンポジウム「中近世の東地中海世界における諸民族の混交」においても報告を行った。 また研究論文としては、「1586年のアマスラ近海の海難事故と黒海における商業活動」が川分圭子、玉木俊明編『商業と異文化の接触―中世後期から近代におけるヨーロッパ国際商業の生成と展開―』に採録されて出版されたほか、1660年のイスタンブル大火についての研究である「1660年のイスタンブル大火とユダヤ教徒コミュニティ」が査読付き学術雑誌である『桜文論叢』96巻に、1656年のダーダネルス海峡封鎖によるイスタンブルとオスマン朝への影響を論じた「ヴェネツィアによる1656年のダーダネルス海峡封鎖とオスマン朝―女人政治の時代からキョプリュリュ家の時代へ―」が『小田淑子先生退職記念論文集』にそれぞれ掲載された。さらに『歴史と地理 世界史の研究252』には「ボスフォラス・ダーダネルス両海峡問題について教えてください」と題した解説も執筆した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度にトルコ共和国で相次ぐテロとクーデタ未遂が発生したことにともなう研究計画の遅れは、少なくとも史料収集の点においては、2017年度における研究活動によって、おおむね解消できたと考えている。とくに9月にイスタンブルを訪問し、近年特に出版が盛んとなっているオスマン朝史研究の最新成果を数多く入手できたことの意義は大きい。また、研究期間が後半に差し掛かったなか、研究成果を公表することも開始し、これらについても口頭発表や論文のかたちでおおむね順調に行うことができている。 一方で、2016年に自らがオーガナイズしていたイスタンブル大学における国際シンポジウムを中止せざるを得なかったことは、依然として悔やまれる。2017年度においては、同大学で開催された第9回国際トルコ海上商業史シンポジウムから招待を受け出席するなかで、オスマン朝史研究の中心であるトルコ共和国において国際シンポジウムを開催することの重要性については、より一層認識することができた。学習院大学の亀長(安西)洋子教授が研究代表者となり、報告者も研究分担者となっている科研B「中近世地中海史の発展的研究: グローバルな時代環境での広域的交流と全体構造」が2018年3月に招聘したエミネ・キュチュク氏の研究報告や同氏との情報交換を通じて、少なくとも中小規模の国際ワークショップは近く実現可能であろうとの見通しを持つことができた。 今後の研究の推進方策でも述べるように、最終年度を残すのみとなった本研究課題の期間中に実現できるかどうかはともかく、近い将来、そうした国際シンポジウムを実施できるように努力を継続していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究期間の最終年度にあたる2018年度においては、以下のような研究の推進方策を予定している。 上記の科研B「中近世地中海史の発展的研究: グローバルな時代環境での広域的交流と全体構造」が招聘したエミネ・キュチュク氏の研究会参加や通訳等の滞日中の対応のため、2018年3月に予定していた史料及び現地調査は実施できなかった。そのため、2018年8月には最後の現地調査の実施を予定している。 これらの調査結果も踏まえた上で、2018年度もさらに口頭での研究報告を行うとともに、研究論文を執筆するかたちで引き続き研究成果を公表していきたい。具体的には、現在のところ6月ごろに『歴史学研究』に論文を投稿し、11月には「東洋史研究会」において研究発表を実施する予定である。
|
Causes of Carryover |
今後の研究の推進方策でも記したように、2016年度に開催を予定しながらも現地情勢の悪化のために中止のやむなきに至ったイスタンブルにおける国際シンポジウムの開催と現地史跡調査の実施のため、連携する科研B「中近世地中海史の発展的研究: グローバルな時代環境での広域的交流と全体構造」が2018年3月に現地研究者のエミネ・キュチュク氏を招聘した。この研究会参加や通訳等の滞日中の対応のため、本来2018年3月に予定していた史料及び現地調査は実施できなかった。そのために発生した2017年度助成金の繰り越し分については、2018年度の助成金に追加するかたちで、同年度の8月に実施を予定を予定しているイスタンブルやイタリアにおける史料と現地の史跡調査および研究打ち合わせの期間を延長するために充当する予定である。
|
Research Products
(7 results)