2015 Fiscal Year Research-status Report
インドの自治構想と第一次世界大戦:〈帝国的相互作用〉と〈植民地間連動〉の視点から
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15K16852
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
上田 知亮 東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナショナリズム / 第一次世界大戦 / インド / 植民地 / イギリス帝国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、(1)インド人政治指導者の自治構想とイギリス帝国観の変容、(2)イギリス本国における帝国政策の変化とインド統治政策の相互作用、(3)英領植民地-インド間の相互認識・思想連鎖・政治連動、という3つの側面から分析することを通じて、第一次世界大戦が植民地インドのナショナリズムに与えた影響を解明することである。 本研究事業の初年度にあたる本年度は、研究計画に沿ってとりわけ(1)について、1910年代から亡くなる1931年まで植民地インド北部の連合州においてナショナリズム運動を主導した穏健派政治家であるモーティーラール・ネールー(Motilal Nehru)の思想と活動の変遷に関する実証分析を中心に研究を進めた。海外での一次資料の調査・収集も行い、2015年9月には、連合王国(UK)・ロンドンの大英図書館に所蔵されている関連書籍のほか、第一次大戦期の新聞・雑誌を閲覧して資料調査・収集を行ったほか、アイルランド・ダブリンでは国立図書館とダブリン大学トリニティ・カレッジで資料調査を実施した。さらに、2016年3月にはインド・デリーのネルー記念博物館・図書館において、モーティーラール・ネールー関連の一次資料の調査・収集を進めた。 具体的な研究成果としては、第一次世界大戦直後の1919年から1920年を境に、モーティーラール・ネールーが政治的立場を徐々に変えていった過程を分析した、論文「第一次世界大戦とインド―植民地ナショナリストからみた帝国秩序―」の執筆を進めた。本論文を収録した論文集『第一次世界大戦と東アジア』は平成28年度中に刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドならびに連合王国(UK、イギリス)、アイルランドにおいて一次資料の収集を実施し、今後の研究の基盤を整えるとともに、新たな研究視角を得ることができた。こうした資料調査で収集した一次資料を活用して論文を執筆し、来年度にこれを研究成果として公表できる運びである。さらにこの論文を軸として、来年度は植民地インドのナショナリストが第一次世界大戦から受けた影響についての比較分析へと発展させていく展望が得られた。以上の理由から、研究は概ね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度につづいて、来年度もインドならびに連合王国(イギリス)、アイルランドで一次資料の調査・収集を行う予定である。また来年度は、モーティーラール・ネールー以外のインド人政治指導者についても、第一次世界大戦から1920年代前半までの時期を中心に研究を一層進めていく。さらに、インド以外のイギリス帝国内の植民地および自治領(アイルランドやエジプト、カナダなど)や、第一次世界大戦後にナショナリズム運動が盛り上がりを示した朝鮮、中国などと、インドにおけるナショナリズム運動との影響関係を分析するため、これら諸国に関する資料の収集と分析を進める。 研究成果の公表に関しては、第一次世界大戦から1920年代前半までの時期におけるインド人政治指導者のナショナリズム思想や国家構想、イギリス帝国観などについて比較分析する論文の執筆に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
本年度から現所属研究機関に新たに着任して研究環境が変わったこともあり、研究活動の開始がやや遅れ、とりわけ書籍購入による物品費の執行が想定よりも少額となり、一部の予算を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、所属研究機関が変更となった本年度と異なり、年度当初から円滑に予算を執行して研究を進められるため、計画的に図書購入による研究基盤の構築や資料調査・収集を実施できると考えられる。上記の「研究推進方策」に基づき、インドやイギリスなど海外での資料調査・収集を実施し、旅費と図書購入費を中心に研究費を充当して計画通りに予算を執行する考えである。
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Research Products
(1 results)