2018 Fiscal Year Annual Research Report
Diffusion and Transformation of the Bacteriological Theoies in the Wilhelminian and Weimar Germany
Project/Area Number |
15K16855
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村上 宏昭 筑波大学, 人文社会系, 助教 (70706952)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 衛生博覧会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は帝政期ドイツで開催されていた結核展覧会を中心に、細菌学説に基づいた結核予防のための啓蒙活動を考察した。未刊行史料や講演記録はドイツ連邦文書館・ベルリン州立図書館等で調査し、その成果として日本西洋史学会第68回大会(5月20日(日) 於・広島大学)において「結核展覧会と市民の美徳」と題した報告を行った。 この研究の意義は以下の二点にある。(1)これまでの疫学史・医療史研究は、コレラやチフスなど大きな社会的スキャンダルとなった疫病の考察に偏り、結核のような慢性疾患についてはあまり掘り下げてこなかった。本研究はそれに対し、当時の社会における結核の意義を再確認し、その克服のための啓蒙運動に着目した。(2)むろん、結核の歴史研究もこれまで存在しはしたが、それらも啓蒙運動については等閑に付してきた。本研究はそれに対し、結核展覧会というイベント方式を中心に、当時の結核予防啓蒙運動の諸相を分析した。 ただし、本研究は当初、「不可視の病原体が病気をもたらすという細菌学の思考法は、どのようなプロセスを経て当時の市民社会の中に浸透したのか」という問題を立て、それに対する回答を見出すことを目的としていたが、研究を進めるに従いそのプロセスの再構成が想定より困難であり、研究期間内に完了することはできなかった。また、研究計画としては1年目にドレスデン国際衛生博覧会(1911年)に至るまでの、帝政期ドイツの衛生啓蒙運動の諸相の分析、2年目以降にGesoleiをはじめとするヴァイマル期の啓蒙運動の展開と変容を考察することになっていたが、これも計画通りに進まず、結局帝政期ドイツの衛生展覧会・博覧会活動にしか目を向けることはできなかった。
|
Research Products
(2 results)