2015 Fiscal Year Research-status Report
先史時代における太平洋西部島嶼地域の貝類利用の復元研究
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15K16873
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 考古学 / 貝類利用 / 貝製品 / 太平洋西部島嶼地域 / 琉球列島 / グアム島 / 製作技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は、琉球列島、伊豆・小笠原諸島、グアムなどの貝製品の集成作業と、現地における資料調査のための機材購入、現地での資料調査などをおこなった。 琉球列島では、近年発掘調査された未報告の貝製品が大量に出土する遺跡について、現地に赴いて資料調査をおこなった。2016年2月には沖縄県伊江村教育委員会が保管しているナガラ原第三貝塚およびカヤ原遺跡A地点から出土した貝製品の資料調査をおこなった。この際、貝製品について実測やマイクロスコープによる観察、撮影を実施した。ナガラ原第三貝塚では、縄文時代後期並行期の貝製品が大量に出土しており、スイジガイ製利器などの実用品と貝製腕輪、獣形貝製品、サメ歯状貝製品、円盤状貝製品などの装飾品が確認でき、当該時期の奄美・沖縄諸島の貝類利用の実態を明確に示していた。 また、2016年3月には鹿児島県伊仙町教育委員会が保管している面縄貝塚群から出土した貝製品についての資料調査をおこなった。当該遺跡で出土した彫刻文様の施された貝製品をマイクロスコープで観察したところ、縄文時代並行期と考えられる彫刻と奈良・平安時代並行期と考えられる彫刻の加工痕跡に、形状や計測値から相違が確認できた。申請者が以前から言及している石器から鉄器への製作道具の変化を、マイクロスコープ観察や計測によって、より客観的に示すことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は琉球列島、伊豆・小笠原諸島、グアム島などの貝製品の集成作業を行った。琉球列島、伊豆・小笠原諸島についての集成作業はおおむね順調に進展している。ただし、当初想定していたとおり、マリアナ諸島グアム島における集成作業は、遺跡のピックアップはできたものの、貝製品の組成に関する詳細な報告がなく、次年度以降、現地での調査で情報を集める必要性が高まった。 また、琉球列島については、近年の発掘調査により資料が急増しているが、そのうちの2遺跡については、今年度に資料調査を終えることができた。次年度以降にも現地での資料調査を継続して実施する必要性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、前年度に引き続き、対象地域の集成作業を行いながら、各地域への資料調査を主な作業とする。鹿児島県、沖縄県、グアム島での調査を主体とし、可能ならば伊豆・小笠原諸島での資料調査を実施する。鹿児島県では、奄美市立奄美博物館、沖縄県では沖縄県立埋蔵文化財調査センターなどが保管している貝製品を調査する予定である。また、グアム島ハプト遺跡で出土している貝製品については、関西外国語大学に保管されているため、保管者の片岡修教授と調整しながら、遺物の実測作業を中心に実施する。 また、2016年8月に開催される奄美考古学会では、琉球列島で出土する広田上層タイプ貝符について研究成果を発表する予定である。この他、資料調査成果についても学会等での発表を検討する。
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Causes of Carryover |
2015年度に調査した伊江村教育委員会での資料調査の際に、レンタカーを借用予定であったが、現地の担当者との相談の結果、レンタカーの必要性が生じず、その他の経費について次年度使用額が生じた。また、伊仙町教育委員会への資料調査の予定が短期間となり、レンタカーの使用額が減額となった。 申請時よりも助成金が減額され、2016年度に必要分の資料調査を実施することが困難であったため、次年度以降の研究計画に支障の出ないよう補填するため、旅費にも次年度使用額が生じた。 物品費については当初購入希望だった文献に在庫がなく、購入することができなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度には、次年度使用額と2016年度助成金の旅費とその他の経費を用いて、申請時に計画した現地での資料調査を可能な限り実施する予定である。物品費については、購入予定だった文献が購入できない場合、故障により必要となった資料調査に用いるデジタルカメラ用単焦点レンズの購入に使用する予定である。
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