2016 Fiscal Year Research-status Report
先史時代における太平洋西部島嶼地域の貝類利用の復元研究
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15K16873
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山野 ケン陽次郎 熊本大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (10711997)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 考古学 / マリアナ諸島 / 貝類利用 / 貝製品 / 組成 / 貝種 / 製作技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、琉球列島、グアムなどの貝製品の集成作業と、現地における資料調査を中心におこなった。 8月には沖縄県立美術館・博物館において、地荒原貝塚や大山貝塚などから出土した貝塚時代前・中期の貝製品について実測と写真撮影、マイクロスコープ撮影を実施した。また、石垣市教育委員会や石垣市立八重山博物館の無土器期、グスク期、近世の貝製品や古銭について実測、写真撮影、マイクロスコープ撮影を実施した。このほか石垣島東海岸の原生貝類の調査を実施した。地荒原貝塚出土資料中に琉球列島の縄文時代後期以降に盛行する貝製品の切断技術である「擦切技法」の痕跡を確認したほか、大山貝塚出土資料中には琉球列島においてこれまでに報告例のないタマキガイ科製貝輪を発見した。 9月にはグアム島ハガニアにあるグアム博物館準備室においてGun Beach Site出土の貝製品の実測と写真撮影を実施した。この他、Public libraryや現地の研究者であるRichard.K.Olmo氏との意見交換を通して、マリアナ諸島の貝製品の集成作業を実施した。グアム島の先史時代であるプレ・ラッテ期の貝製品の組成について再確認できたほか、グアム島の発掘調査報告書のPDFデータを入手することができた。 8月、11月に開催された第8回奄美考古学会と沖縄考古学会鹿児島県考古学会合同学会では、琉球列島で出土する広田上層タイプ貝符の研究や縄文時代後晩期の貝製品に関する研究成果を発表し、情報交換会において研究者との意見交換もおこなった。 このほか、写真撮影用の単焦点レンズの購入や島嶼研究関係の文献を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は琉球列島、グアム島の貝製品の集成作業を前年度に継続して実施した。とくにグアム島の出土資料については、現地調査によって多数の報告書データを得ることができたた。また、琉球列島出土資料については未報告資料や新資料も含めて集成を進めた。加えて、沖縄県立美術館・博物館や石垣市教育委員会の貝製品の資料調査も実施することが出来た。 8月に開催された奄美考古学会では琉球列島で出土する広田上層タイプ貝符の研究成果を発表、11月に開催された沖縄考古学会・鹿児島県考古学会合同学会では琉球列島の縄文時代後晩期の貝製品の研究成果を発表した。 ただし、当初予定していたフィリピンや伊豆・小笠原諸島についての資料調査は研究費の不足により実施できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は、前年度に引き続き対象地域の集成作業をおこないながら、グアム島や琉球列島への資料調査を主な作業とする。具体的には、①関西外国語大学の片岡修教授が保管するグアム島ハプト遺跡の貝製品、②ふじのくに地球環境史ミュージアムのマーク・ハドソン先生が保管する宮古島長墓遺跡の貝製品・骨製品、③グアム島グアムミュージアムで保管されている貝製品などについて資料調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度は熊本地震の影響により埋蔵文化財発掘調査・報告書執筆を業務とする研究代表者が多忙となった。また、グアムにおける文献収集により、想定よりも対象資料が膨大であることが判明し、整理に時間を要することになった。また、資料調査を実施しているグアム博物館の準備室が、博物館新設のために担当職員が多忙となり、調査について調査機関との再調整が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度にはグアム島での資料調査を目的とするため、旅費に費用の多くを使用する。この際、資料調査における写真撮影、表作成補助として人員を雇用し、調査のスピードを上げる必要性がある。
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Research Products
(3 results)