2016 Fiscal Year Research-status Report
更新世/完新世移行期の人類大移動期にみる極東アジア石器製作伝統の実験考古学的研究
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15K16875
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
長井 謙治 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (20647028)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 更新世/完新世 / 中期旧石器時代 / 縄文時代草創期 / 人類大移動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では更新世・完新世におけるモンゴロイドの東アジア規模でみた移住・拡散の問題について、実験考古学的な視点を加味した考古資料の比較を通して、極東アジア人類社会の歴史的動態を相対化することを目的としている。初年度は現地調査準備のための文献資料収集と現地見学を重点的に行ったが、2年目にあたる平成28年度は、人類大移動期における更新世・完新世の遺跡を対象とした本格的な考古学的調査を実現させた。調査は東北芸術工科大学歴史遺産学科長井ゼミナールの学生を主体として地域住民の協力を得て行った。4月、南陽市岩部山洞窟遺跡(立岩岩陰)の考古学的調査を実施し、弥生時代に比定される祭祀遺跡の実態を明らかにした。8・9月、高畠町日向洞窟遺跡の第4次発掘調査を実施した。ヤンガードリアス期前後の良好な遺物を獲得し、現在整理を進めている。2月には初期人類の移動ルート推定に一翼を担うフィールド、北九州市辻田遺跡を対象とした発掘調査を実施した。調査は、後期更新世における日本列島への人類移動を確かな考古学的証拠に基づき議論するための基礎資料を得ることを目的として、旧石器時代の遺物包含層の広がりとその年代的把握を目的に実施した。結果、辻田遺跡の阿蘇4火砕流堆積物に生痕や生活面を示すクラックが発達する再堆積物が存在すること、レス-古土壌の堆積サイクルをしめすグローバルな古環境変動を検討できる豊富な情報が残されていることを明らかにした。次年度は、各遺跡の自然科学分析を積極的に試みて、往時の古環境復元を射程に収めた生活構造の総合的理解に迫る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、ほぼ計画通りに調査を実現することができた。当初の計画に加えて、後期旧石器時代初頭から中期旧石器時代における人類大移動期の検討対象遺跡の調査(辻田遺跡の発掘調査)を実現させることにより、以後東アジア規模でみたレス-古土壌による旧石器時代編年を可能とするデータの獲得に成功した。次年度以降の分析と総合解釈に向けて順調に研究は進んでいる。復元製作による実験研究については、遺跡形成過程や被熱作用による岩片形成をターゲットとした内容にシフトさせる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果を最大限に得るため、今後も研究計画の部分的な修正を図りつつ、現地調査を継続実施する。あわせて、平成28年度に獲得した資料の自然科学分析にも着手する。3年目は具体的な成果の速報、公開を意識し、地域行政向きの発掘調査報告書の作成、全国学会誌への研究公開をする。また、考古学ジャーナルなどでアカデミック・レポートを作成する。
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Causes of Carryover |
初年度終了後、最大の成果を導くことができるよう支出計画の見直しを行った。とりわけ3年度以降実施予定の追加現地調査と自然科学分析については、人類大移動モデルを構築するための研究の根幹をなすものと考えられたため調査費用等を見直し、繰越金をそのための費用に充てることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3年度以降にも実施予定の考古学的現地調査における関係者招聘旅費(国内移動費)、自然科学分析委託に係る経費に利用する予定である。また、2年度に不十分であった資料の見学旅費、研究環境整備のための物品費にも一部用いる。
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