2018 Fiscal Year Annual Research Report
Basic research of geographical information on distribution area of flora and fauna using the product documents of early modern Japan
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15K16884
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
渡辺 理絵 山形大学, 農学部, 准教授 (50601390)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 産物データ / 動植物 / 近世 / 東北 / 食用資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまで東北地方の産物データの収集に努めてきた。岩手県と山形県の産物データのデータベース(以下、DB)が完成した最終年度は、そのDBから山形県の山菜情報を抽出し、その種類と利用に関する分析を報告した。 山形県の場合、産物データとして①「羽州庄内領産物帳」(酒田光丘文庫蔵)、②「米沢産物集」(市立米沢図書館蔵)③「松竹往来」(鶴岡市立郷土資料館)があげられる。①~③の産物データに記載の山菜の種類は①22種、②122種、③68種である。従来、前近代の山菜利用については救荒書などによって言及されることが多く、その場合、実際の利用の可否を問うことは難しかったが、これらの資料は当時の藩領の人々が実際に食用資源として利用していた山菜にあたる。そこにはツクシ・オオバコ・イタドリ・セリ・ナズナ・スベリヒユなど、人里近くで手軽に採取できるよう山菜が目につく。これらの山菜の垂直分布では、集落とその近郊・水辺・畦畔→山林の縁→里山→深山→高地までの範囲で自生する山菜が列記される。ただし深山に自生の山菜は少ない。68種の山菜の多くは城下での入手容易性を基準として記載されたと考えられる。従来、山菜は近世では山村の自給自足的な側面の中で、近代以降は山村経済の外部性の中で議論されがちであったが、本研究から山村に限らない町場・平地の人々による山野の資源利用について検討する余地があることを指摘できる。 申請者は以上の内容を東北地理学会(2018)やG空間EXPO2017などで発表した。
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Research Products
(2 results)