2015 Fiscal Year Research-status Report
域内自由貿易の進展下における東南アジア自動車産業の空間構造
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15K16887
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宇根 義己 金沢大学, 人間科学系, 講師 (40585056)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 自動車産業集積 / 東南アジア / 日系企業 / 生産システム / タイ / インドネシア / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,1)東南アジアにおける自動車産業の空間構造の把握,2)タイにおける自動車産業の最新動向の把握と東南アジア自動車産業のハブとしての役割についての把握,そして3)それらに関する研究成果の発表を実施した。 1)東南アジアにおける自動車産業の空間構造の把握については,東南アジア主要生産国における日系自動車企業および同自動車部品企業の展開を時系列的・空間的に分析した。とりわけ,2000年代以降の近年の動向に着目した。他国に先駆けて自動車産業が急成長したタイの場合,1990年代に拡大した集積地域において2000年代以降も層を厚くするようにして展開してきたのに対し,2010年頃から急成長を遂げているインドネシアでは自動車産業集積の外延的拡大を伴いながら発展していることが分かった。マレーシア,フィリピン,ベトナムについては生産台数,立地企業数とも停滞気味で推移している。2)タイにおける自動車産業の最新動向の把握と東南アジア自動車産業のハブとしての役割についての把握は,日系自動車企業2社についてタイで訪問調査と資料収集を行い,それをもとに分析した。生産台数の増加に伴う生産システムの再編成の実態とサプライヤー関係の動向,東南アジアにおける事業展開の概要が把握できた。 3)として,これらの研究成果の一部を,2015年日本地理学会秋季学術大会,第10回中日韓合同地理学会議(国際学会),広島大学現代インド研究センター研究集会にて発表した。 東南アジア自動車産業は成長著しく,その把握が求められるが,個別企業の事例をもとにした地理学的研究は少なく,最新状況の一部を分析および公開したことは意義があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では,タイでの調査をインドネシアおよびベトナムでの調査の地ならしを兼ねて実施することとしていた。しかし,タイ調査の計画中,2015年8月にバンコクで無差別テロ事件が発生したことから,調査企業のうちの1社より訪問時期延期の連絡を受けた。その後,同社への訪問調査は2016年2月に実施したが,地ならしが進まなかった。同社は過去に訪問したことが2度あり,長期的な企業の動向を把握できることから,本研究においては貴重な存在である。そこで来年度以降はタイおよび日本で地ならしをしながら,インドネシアおよびベトナムでの調査を実施する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度研究においてタイでのテロの影響があったように,テロなど予想できない事件により現地調査が困難となる場合が考えられる。その場合は調査時期の変更や調査対象国・地域の入れ替え・変更などにより調整を図り,研究を推進する。また,本研究は調査先企業の協力が不可欠である。調査先企業の確保に努めながら,各企業の個人情報等の指針に沿って提供資料等を管理するなど,慎重な行動を心がける。
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Causes of Carryover |
一つ目に,2015年9月に実施したタイでの調査において,前月に発生したテロ事件のため,滞在期間が計画よりも短くなったことから,旅費が少なく抑えられたことが挙げられる。もう一つは,資料の整理にかかる謝金や現地での協力者への謝金を目的として,人件費・謝金の支出を計画したが,これらを実施しない範囲で分析および研究実施が可能となったことから,これについての予算が抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金と合わせて,今後実施するインドネシアおよびベトナムでの現地調査費用として重点的に使用する。状況に応じて,日本本社などへの聞き取りなど,日本国内での資料収集および研究発表などにおいて使用する。
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