2016 Fiscal Year Research-status Report
レバノン高齢社会の人類学的研究―親族・国外移民・家事労働者
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15K16895
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
池田 昭光 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10725865)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 高齢者福祉 / 高齢者施設 / NGO |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、(1)学会発表、(2)レバノン共和国における現地調査を中心に研究を進めた。以下、それぞれについて説明する。 (1)については、モンゴルで行われたアジア中東学会連合の大会において、また、東京で行われたアジア・アフリカ研究コンソーシアムの国際会議において、今後の調査・研究の基礎となる理論的視点について、フィールドで出会った高齢者の事例を用いながら、コミュニケーションや相互行為の観点から発表を行った。大会会場では、東アジア、欧米諸国の研究者と意見交換を行い、国際的な水準での成果還元に貢献することができた。 (2)については、約3週間の現地調査を、ベイルート市およびその近郊で実施することができた。調査においては、高齢者福祉に関する複数の施設・組織の訪問及び関係者への聞き取りを中心に据えた。うち、ベイルート市郊外の養老院とNGOにおいては、ボランティア活動に参加することを許可され、高齢者への支援活動の参与観察も行うことができた。これにより、レバノンにおける高齢者福祉の実態について基礎的な知見を得ることができ、来年度以降のさらなる調査に向けた研究の基盤づくりを行うことができた。 また、調査の過程ではレバノンの諸大学の研究者とも意見交換を行い、同様に研究基盤の整備に関して大きな助力を得た。さらに、レバノン大学社会科学研究所では、移民研究のセミナーに招かれて講演を行い、レバノンでの調査の概要を、移民との関わりから紹介し、出席者との間で意見交換を行った。これにより、研究成果の現地還元を行うことができた。 あわせて、ドイツ東洋学研究所、ノートルダム大学での文献資料収集も行い、日本では入手困難な資料を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
学会発表については、国際学会で行うことにより、広く日本国外の研究者に向けて成果公開を行うことができた。 現地調査については、当初は一か村のみの集中的な調査を予定していたが、レバノン情勢の推移が、シリア情勢との関連で予断を許さないことを鑑み、複数箇所の調査地を並行的に調査することにした。現地の高齢者福祉施設・組織や一般市民からは、本研究課題に対する理解と協力を得ることができた。そのため、スノーボール式に訪問可能な施設・組織・人物のリストを広げることが可能となった。また、二箇所においてボランティア活動への参与観察を許可されたことは、福祉活動に関する、食事や物品の提供、活動従事者の社会文化的背景を人類学的に把握するうえではまたとない機会となった。 よって、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度については、引き続き現地調査を中心に進めて行きたい。平成28年度の調査時に、多くの高齢者福祉施設および関係者を紹介され、中には日程的な都合から訪問・面会が適わなかったケースもあるため、今年度はさらに調査・研究のネットワークを充実させたい。 また、昨年度訪問した施設・組織についても継続して調査を行い、データの質・量ともに深化拡大を図りたい。
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Research Products
(4 results)