2017 Fiscal Year Research-status Report
レバノン高齢社会の人類学的研究―親族・国外移民・家事労働者
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15K16895
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
池田 昭光 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10725865)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢化 / レバノン / 宗派 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、(1)学会発表、(2)レバノン共和国における現地調査、(3)調査成果に関する原稿執筆を行った。以下、それぞれについて説明する。 (1)については、日本中東学会、日本文化人類学会の各大会において、当研究課題の調査研究上の核心となる理論的視点について、高齢者の事例を用いつつ相互行為と宗派主義の観点から発表を行った。大会会場では、中東地域研究、文化人類学・社会人類学の研究者と意見交換を行い、成果還元や今後の研究課題の把握につなげることができた。 (2)については、現地調査をレバノン共和国で実施することができた。昨年度の調査過程が良好であったため、その結果にもとづきつつ、さらに内容を深化・拡充する目的で実施した。調査においては、昨年度に継続して高齢者福祉に関する複数の施設・組織の訪問及び関係者への聞き取りを中心に据えた。その際、施設経営に関する特徴を、複数の組織(キリスト教系、イスラーム系、世俗系等)において比較し、また、入居者や現場スタッフへの聞き取りも行うなど、昨年度は不十分であった点の補足に努めた。加えて、親族集団における高齢者の位置づけについても初歩的な聞き取り調査を実施した。これらの調査により、レバノンにおける高齢化および高齢者福祉関連活動の実態について貴重な資料を得ることができた。 あわせて、ドイツ東洋学研究所、国連ESCWA図書室での文献資料収集も行い、研究課題遂行に必要な資料を閲覧することができた。 (3)については、これまでの調査・研究のうち、特にフィールドワークに関する経験を東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の雑誌『フィールドプラス』に執筆した(2018年度刊行予定)。同誌は研究者以外の読者にも広く開かれた雑誌であり、これにより研究成果の社会還元も行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表については、中東地域研究および文化人類学の両方の学会で行うことにより、専門分野・地域を異にする研究者に向けて広く成果公開を行うことができた。 現地調査については、当初はカナダのレバノン系住民を対象とする調査を計画していたが、昨年度のレバノン共和国調査が順調に進み、また、当初想定した以上に同国で資料が得られるとわかったため、当研究課題の遂行に際しては、まずはレバノンでの集中的な調査を行うことが重要であると判断した。こうした継続的な訪問は現地住民との良好な関係を築くうえでも不可欠であると考えている。 実際の調査においては、昨年度の訪問がかなわなかった施設を訪れたり、施設経営の特徴、入居者やスタッフへの聞き取りなど、昨年度は調査がやや不十分であった点を補足・拡充することができたりなど、当研究課題の遂行においてはきわめて重要な資料が得られた。 よって、当研究課題がおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度については、(1)学会発表、(2)現地調査、(3)研究成果の執筆に努めたい。 (1)は、スペインで行われる世界中東学会での学会発表を行う予定である。(2)は、2018年度の調査を補足する内容の調査を短期間実施する予定である。(3)は、これまでの調査成果に基づき、学会誌等の出版物に投稿するための原稿執筆を行う予定である。 これらの活動を通し、当研究課題の成果を学内外に向けて発信することに努めて行きたい。
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Causes of Carryover |
研究代表者は2017年度の途中(7月)より身分に異動が生じ、新しい業務に従事することになった。この業務での作業量増加のゆえ、当初計画していた調査期間よりも短い期間での調査を余儀なくされ、結果的に残額が生じることとなった。 2017年度残額については、2018年度請求分と合わせ、学会発表や海外調査の際の旅費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)