2017 Fiscal Year Annual Research Report
Towards Sustainable Development of Handicraft: Correlation of Socio-cultural Value and Quality of Turkish Carpets in the Production Areas
Project/Area Number |
15K16896
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田村 うらら 金沢大学, 人間科学系, 准教授 (10580350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 手工芸 / 人類学 / トルコ / 絨毯 / 生産・流通・消費 / グローバル化 / 価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である平成29年度は、フィールドであるトルコの政情不安により現地調査計画を大幅に変更せざるを得なかった前年度の遅れを取り戻すべく、データのまとめとフィールドワークを中心とした研究を遂行した。 主たるデータ収集の活動としては、夏季にトルコにおける補足的な現地調査を行ない、また10月にアゼルバイジャンの首都バクーで開催された第5回アゼルバイジャン絨毯国際シンポジウムに参加し、国家と絨毯文化と世界的専門家の関係についての観察を行なうとともに、研究者・専門家たちと議論・交流した。 トルコにおけるフィールドワークでは、従前の調査地である絨毯の伝統的産地ムーラ県ミラス地方において、村落部の絨毯生産と流通に関わる補足調査およびミラス市内で流通および展示等の最新状況についての調査を行なった。その結果、村落部の絨毯生産が材料供給面から危機に瀕している新たな状況が明らかになると共に、絨毯のローカルな価値自体の揺らぎを示す興味深い事例も収集するに至った。また、ミラス市内での絨毯博物館の新設予定など、絨毯の「遺産化」を示すその準備過程についてのデータを収集した。 国家が積極的に絨毯の「遺産化」に関与するアゼルバイジャン文化庁が主催した国際シンポジウムには、欧米諸国・旧ソ連圏の研究者・専門家を中心に数百名が集いアゼルバイジャン絨毯の歴史・流通・現代アート化の側面などについて、集中的な議論が行なわれた。国の代表者の絨毯表象と国外専門家の認識のズレなどを如実に示す議論が観察され、本研究課題の核心に迫るデータが収集できた。 新たなフィールドデータの分析の必要性から前年度の遅れを完全に挽回するには至らなかったが、平成30年度以降、本科研による調査を基にした英語論文の出版や経済人類学の国際シンポジウムでの発表が既に決定しており、本科研の成果を国際的に発信する準備が進んでいる。
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