2016 Fiscal Year Research-status Report
中国系移民社会間における再生産労働の分業化と家族形成をめぐる社会人類学的研究
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15K16899
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
横田 祥子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (80709535)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生産労働 / モラル・エコノミー / エスニック・エコノミー / 華人 / 香港 / インドネシア西カリマンタン州 / 越境結婚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、成果報告としてインドネシア西カリマンタン州シンカワン市の一村落における調査をもとに、結婚や就労を機に海外へ移動する女性と、出身家族の送金への依存状況を記した論文を発表した。また、同成果は台湾で開催された「国際客家学会議」においても報告し、今後台湾人研究者と国際共同研究の可能性を探ることになった。 他に、本研究のマクロ的背景にあたる台湾と東南アジア諸国との国際関係や、東南アジア女性の表象の消費について学術書に論考を発表した。 本年度は、新たに香港におけるインドネシア華人女性の移住・結婚について資料調査を開始した。香港社会は、台湾同様に再生産労働の担い手を、東南アジア諸国、特にインドネシアに求めており、移住労働者の人権や社会統合に高い関心を払っている。再生産労働者の需要が高いということは、当然のことながら越境結婚に対する需要も高く、香港人男性と大陸出身女性の越境結婚が相当数に上っている。その他、南アジア系移民の社会統合が急務となっている。これらの課題は、香港の社会科学分野において、膨大な研究がなされている。その一方、インドネシア華人女性の越境結婚と移住については、わずか1本の論文が刊行されているのみで、現地研究者の間でもほとんど知られていないことが分かった。 資料収集の範囲を拡大したところ、幸いにも概要を把握するのに十分な資料を得ることができた。今後は、現地の研究者の協力を仰ぎながら、香港にて長期にわたり滞在し、インタビュー、参与観察を充実させ、データの収集に努めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目に入り、ようやくインドネシア華人女性の主たる移住先・香港での資料収集を開始できた。長年調査を行ってきた台湾と香港、そしてインドネシア西カリマンタン州における、再生産労働の担われ方、世帯保持の実践を比較するための資料は集まりつつあるが、現地での調査が不足している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、香港で実地調査を行うとともに、マレーシア、シンガポールにおいてインドネシア華人女性の越境結婚についても調査を開始する。日本国内においては、現地の移民政策、再生産労働者導入にかかる政策について、先行研究を収集・熟読するとともに、国内研究者から示唆を受ける。 香港では、香港中文大学などの研究者の協力を得ながら、実地調査を行う。 マレーシアにおけるインドネシア華人女性の研究については、そのほとんどがシンガポール人研究者によってなされていることが分かっている。そのため、シンガポールでは研究者との交流、並びに両国の状況についての資料収集を行う。また、マレーシアではマラヤ大学などの研究者の協力を仰ぐ予定である。
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Causes of Carryover |
大学での教育の傍ら、海外調査を行える期間が限られている上、体調不良が重なったため、研究費を十分に活用できなかった。さらに、他の科研費の分担者となっており、その負担が少し大きかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
分担者となっている他の科研のエフォート率を下げ、本科研にかける時間を増やす。
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Research Products
(6 results)