2015 Fiscal Year Research-status Report
ケア基底的社会の原理:法理論における「ケアの倫理」の可能性と限界
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15K16911
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
池田 弘乃 山形大学, 人文学部, 講師 (80637570)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ケアの倫理 / フェミニズム / 法哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フェミニズム理論の中から生み出されてきた「ケアの倫理」と呼ばれる発想が、法理論に対してどのような寄与をなしうるものなのかについて原理的な考察を行うことを目的とする。 特にケアのコストとしての側面―社会が存続のために支払わなければならない様々な労働や代価―と、ケアの価値としての側面との両面に着目し、後者を積極的に涵養する社会とはどのようなものなのかを、涵養すること自体の是非も含め考察することを目指す。 平成27年度は、主として関連する文献を収集し精査する作業が研究計画の中心をなす。近年の理論的進展、例えば法哲学上の自然法論や政治哲学上の卓越主義と「ケアの倫理」との接続を目指す傾向を探査した一方、古典的な著作についても再読を試みた。 このような文献検討作業とそれに基づく研究構想を、一方ではジェンダーやセクシュアリティ研究の場で、他方では法学研究の場で発表し他の研究者との討議のなかで批判を仰いだ。本年度は、学会報告を1件と判例評釈を1件行った。また、次年度に予定されている学会でケアを正面からテーマとして扱う企画に参加し、自らもそこで報告を行うことになったため、他の報告者と数回にわたり企画のための研究会を行い、本研究についても有益な示唆を多数得た。研究成果の公表については、年度内にフェミニズムについての論文を1本公刊した。他にも、性的マイノリティと家族制度について論じた脱稿した論説があり近日中に刊行の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関連する文献の収集とその検討については、当初の計画通り進めることができた。ケアの倫理に関わる文献は、社会学、医学・看護学、哲学、倫理学と多岐にわたる分野に広がっているが、特に法学・政治学との関連性を含むであろうものを中心に検討をはかった。 当初の計画では、「ジェンダー・セクシュアリティと法」についての共同研究を本研究の成果を盛り込みながら年度末を目途に公刊する予定であった。近日中の公刊を予定している。 研究発表と討議の機会については、日本政治学会での報告をはじめとして多様な分野の研究者が集う場で発表することができ、有益な批判を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度の研究作業をもとに、それをまとまった成果の形で発表することとしたい。本研究の骨子について、学会報告を行うとともに関連する学術雑誌にその成果を投稿する。合わせて、本研究の学際的性質に鑑み可能な限り様々な分野の研究者と交流し批判を得ることでよりよい研究成果の達成を目指す。
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Causes of Carryover |
予算通りの執行に努めたが端数が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として図書購入に充てる。
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Research Products
(3 results)