2016 Fiscal Year Research-status Report
功績概念の再検討を通じた応報刑論の擁護とその含意の解明
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15K16913
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
米村 幸太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00585185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 応報主義 / 刑罰 / 正義論 / フェアプレイ / リベラリズム / 政治的リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は刑罰についての応報主義(retributivism)の内実と正当化可能性について、功績の概念を手掛かりとして考察することにある。本年度は、前年度の功績概念の分析と正義論における位置づけを踏まえて、刑罰に関する応報主義の姿を再定式化するという課題に取り組んだ。前年度は、リベラルな立場からも受容可能な応報主義の形態として、それを刑罰についてのfair-play論として再把握すべきことを論じたのだが、この立場をより十全に展開するためには、現代リベラリズムそのものに対するより突っ込んだ検討が必要であると自覚するに至った。この知見に立って本年度は、応報主義論の予備作業として、背景をなすリベラリズム論、とりわけ現代において中心となっている政治的リベラリズムについて集中的に検討を行った。その意味で、当初の研究計画の記載とはやや異なる方向へと研究がシフトしているが、これは研究課題遂行のための必要な変更として理解している。 このリベラリズム論に関する検討の一部は、2017年度の『法と哲学』(井上達夫責任編集、信山社)第3号に、「2つのパターナリズムと中立性」として既に発表することができた。また、2016年度12月には、'Political Liberalism and the Exclusion Problem'というタイトルで、横浜国立大学で開催された国際ワークショップ'Workshop on Happiness, Well-being and Unrest 'にて発表を行い、参加者から有益なフィードバックを得ることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の概要欄においても記した通り、研究課題の遂行のために当初はさほど必要性を意識していなかった作業が大きく出来することになり、その意味では若干の予定変更を余儀なくされていると言わざるを得ない。ただ、当初予定されていなかったリベラリズム(とりわけ政治的リベラリズム)に関する論考を、英語論文として、IVR young scholar prizeに投稿し、また小規模ながら国際ワークショップでも発表するなど、前年度課題としていた英語による発信という面では、大きく進捗があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年7月にリスボンで開催されるIVR世界大会での発表はじめ今後は最終年度として集中的に発表、論文投稿を行い、アウトプットを増やすとともに、自らの考えに対するフィードバックを得て、研究課題をより前に進めることに努めたい。
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Causes of Carryover |
本年度は関連する主な国際学会が開催されない年度にあたり、また国内学会も東京付近で開催されたため旅費支出が不要であった。また、PC等の研究関連機器についても前年度購入分によって十分にまかなえたため大きな支出がなされなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は既にリスボンへの渡航が決定しており、また関西方面への出張も確定しているため、次年度使用額は十分に執行できると予想される。
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Research Products
(2 results)