2017 Fiscal Year Research-status Report
功績概念の再検討を通じた応報刑論の擁護とその含意の解明
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15K16913
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
米村 幸太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00585185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 功績 / フェアプレイ / リベラリズム / リベラル卓越主義 / 政治的リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、刑罰についての応報主義(retributivism)の内実と正当化可能性について、功績の概念を手掛かりとして考察することにあるが、前年度までの研究では、リベラルな立場からも受容可能な応報主義の形態として、応報主義を刑罰についてのfair-play論として再把握すべきことを論じた。この立場をより十全に展開するためには、現代リベラリズムそのものに対するより突っ込んだ検討が必要であると自覚するに至った。本年度は、こうした研究方向のシフトにしたがい、前年度に引き続きリベラリズムの諸形態、とくに政治的リベラリズムとリベラル卓越主義について、集中的に検討を行った。政治的リベラリズムに関する検討の成果の一部として、2017年 World Congress of the International Association for the Philosophy of Law and Social Philosophyにおいて、'Political Liberalism and Immigration'というタイトルで報告を行った。そこでは政治的リベラリズムが、異なる包括的教説への寛容を謳いつつ、実際にはその重なり合う合意を維持するために、社会のメンバーの信念を固定化する「封じ込め(containment)」を要請することを、移民政策との関連で論じた。また、リベラル卓越主義については、とくにJoseph Raz以降のAlexandra Coutoをはじめとした議論を総括しつつ、それが個人の自由の保障と卓越主義的介入の両立に結局失敗しており、棄却されるべきだと結論付けた。「自由と卓越の隘路: リベラル卓越主義の検討」(『横浜法学』26(3),141-171)に論考の形で成果をまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の概要欄においても記した通り、研究課題の遂行のために当初はさほど必要性を意識していなかった作業が大きく出来することになり、その意味では若干の予定変更を余儀なくされていると言わざるを得ない。ただ、国際学会での業績報告を行い、前年度課題としていた英語による発信という面では、大きく進捗があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
継続的な国際学会での報告を行うために、研究課題の延長申請を行った。次年度は、引き続き邦語論文の形でのアウトプットを予定しているとともに、国際功利主義学会および日本で開かれる初の法哲学国際学会であるIVR-J2018での英語報告によって、本課題の総括的アウトプットを行う予定である。
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Causes of Carryover |
報告を企図していた国際学会が今年度開催されず次年度であったため、旅費支出に余剰が生じたため。なお、次年度において当該学会への参加費および渡航費として使用する予定である。
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Research Products
(2 results)