2018 Fiscal Year Research-status Report
功績概念の再検討を通じた応報刑論の擁護とその含意の解明
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15K16913
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
米村 幸太郎 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (00585185)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 功績 / リベラリズム / フェアプレイ / 卓越主義 / 政治的リベラリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、刑罰についての応報主義(retributivism)の内実と正当化可能性について、功績の概念を手掛かりとして考察することにあるが、前年度まで の研究では、リベラルな立場からも受容可能な応報主義の形態として、応報主義を刑罰についてのfair-play論として再把握すべきことを論じたうえで、この立場をよ り十全に展開するためには、現代リベラリズムそのものに対するより突っ込んだ検討が必要であると結論付けた。この認識に立脚して、リベラリズムの諸形態、とくに政治的リベラリズムとリベラル卓越主義について検討した。その際、今年度前半はとくに、諸個人の良き生の構想に対する国家の中立性の要請をめぐる概念史を検討した。中立性への賛否が政治的リベラリズムとリベラル卓越主義を分けるメルクマールのように言われているが、実際にはそれは誤解であり、適切に再構成された中立性の理解に立てば、中立的であることと維持しつつ、一定の卓越主義的実践を適切に容認しつつ、文化や言語への中立的実践を同時に正当化できる。このように、Alan Pattenらの議論を批判的に検討する中で、考えるに至った。こうした議論を、The 1st IVR Japan International Conferenceにおける英語報告(Reviving Neutrality and Its Implication)で発表した。その成果を現在活字化中である。また、中立性に関する哲学的検討は低調であるように従来言われてきたが、とくにヨーロッパ諸国を中心として、移民の流入を背景に、宗教的実践に対する国家の対応のあり方を考える際の、一つのホットなキーワードになりつつあることを発見した。そうした関心から中立性概念の再検討がなされていることを、Leni Frankenや、Alexa Zellentinらの著作を検討し確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要欄において記した通り、本年度の後半に育児休業を取得したため、当該期間は研究課題の遂行ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
育児休業によって研究を休止した分については、本年度認められた延長期間において遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
育児休業のため年度後半において研究中断期間が生じたこと、および、それに付随して、予定していた国際学会での成果報告が不可能になりとりわけ旅費支出が余剰となった。次年度使用額については、国際学会IVR2019での報告およびその他の代替的学会参加に主として支出する見込みである。
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Research Products
(1 results)