2015 Fiscal Year Research-status Report
集合的利益・拡散的利益を巡る法制度設計―消費者・環境・情報法制の架橋
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15K16916
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
横田 明美 千葉大学, 法政経学部, 准教授 (60713469)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境法 / 情報法 / 行政法 / 消費者法 |
Outline of Annual Research Achievements |
4カ年計画の初年度である平成27年度においては、集合的利益・拡散的利益が中心的に論じられているテーマについての総括を行いつつ、本研究が主たる対象とする情報法・環境法・消費者法の3分野に共通する問題点や視座を発掘することを目的とした。 情報法研究者との議論で得られた課題として、ドイツにおける「データ保護団体訴訟」設立の動きがある。これは、従来消費者保護目的の法律違反につき、消費者団体に提訴権を認めていた差止訴訟法を改正し、日本での「個人情報保護」に相当する「データ保護」についても、提訴権を認め、さらには行政機関との連携をはかる条項が付け加わった改正である。 これは、本研究との関係ではまさに集合的利益・拡散的利益保護についての分野をまたぐ立法動向ということができるため、草案段階から検討に着手し、情報ネットワーク法学会第15回研究大会にて、「ドイツにおけるデータ保護団体訴訟法案の動向」という個別報告を行った。 他方、環境法については、廃棄物処理法の生活環境影響評価と周辺住民の原告適格との関係が問題となった最判平成26・7・29(民集68巻6号620頁)につき、実務家と研究者の双方から議論するシンポジウムにて報告し、環境訴訟と環境法政策における利益論と手続の関係につき、一定の知見を得た。 その他、消費者保護制度と情報法政策との関係が問題となるAIネットワーク化問題につき総務省の主催する会議に出席し報告することで、環境法政策を中心とした行政法の枠組みと、情報法政策との関係を考察した。そこでは、化学物質管理における環境法のリスク論や情報提供の枠組みを、他の分野にも応用するための知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
進捗について、研究成果の媒体掲載にまで至ったものは少ない(この点はやや遅れている)ものの、当初の予定よりも明確な研究対象(ドイツにおけるデータ保護法制と団体訴訟の関係、AIネットワーク化問題における本研究の意義等)が見つかった点では、初年度に達成しなければならなかった3分野を横断する問題の発見とそのための人的ネットワーク作りについては順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
欧州・米国における個人情報をめぐる法制度の変更および紛争の進展が思いの外速い上、ドイツにおける事情は欧州全体の動向とはやや異なる形で進んでいるようである。そのため、今後は現地における聞き取り調査や文献収集を行い、より正確かつ詳細な分析を行う。
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Causes of Carryover |
申請額に比して交付決定額が少なかったため、初年度に行う予定であった海外調査を見送り、初年度は文献収集と国内における学会報告等に注力した。そのため、海外渡航のため予定していた旅費分から、文献調査に注力したために増加した分を引いた額を、来年度以降の計画に充てることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に参加した環境法・行政法の研究会にて、ドイツにおける環境法制度の専門家とのコンタクトが取れたため、初年度に行うはずであった海外調査に加え、インタビュー取材等も含めた海外調査を行うこととする。
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Research Products
(1 results)