2017 Fiscal Year Annual Research Report
A Study of Comparative Constituional Law on Protecting Student's Right to Freedom of Religion and Administrative Law Analysis in Japan and Canada
Project/Area Number |
15K16918
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
栗田 佳泰 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60432837)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 信教の自由 / カナダ / アメリカ / 多文化主義 / accommodation / 憲法 / 比較憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
いわゆる「剣道実技拒否事件」で最高裁判決は、憲法上の権利である「信教の自由」への侵害を認めなかった。これは、人権規定が及ばない「飛び地」を示唆しているのではないか。一方、同判決は、行政裁量統制の手法により憲法上の権利ではなく価値を尊重した妥当な結論を導いたものと評価しうる。それでは、憲法上の権利と価値とは、どのように使い分けられるべきか。この点、カナダ最高裁は、類似の事案で信教の自由への侵害を認めた。採用すべき審査手法において最高裁判事の意見は分かれ、法令に対する違憲審査手法を転用するのではなく行政裁量統制の手法を用いるべきという少数意見もあった。いずれにしても信教の自由への侵害は認められた。このような相違はどのようにして生じたのか。 初年度では、信教の自由について日米加比較を行い、日本とは異なりカナダやアメリカは僅少ながらも信教の自由への侵害を認めた最高裁判決を有すること、また、カナダは少数派を受容する伝統があることと等、いわば憲法文化の違いを明らかにした。 第2年度では、宗教的多様性を教える授業への出席免除が合理的配慮として認められなかったカナダ最高裁判決を取り上げた。同判決では、国家の宗教的中立性の観点から宗教的な多様性を学ぶことそれ自体が信教の自由を侵害することはないとされた。ここから、学校における子どもの信教の自由の侵害の有無は、教育内容の妥当性に関わり、子どもではなく教育を行う側の視点が問題とされることが分かった。 最終年度では、「剣道実技拒否事件」だけでなく、思想・良心の自由への侵害が問題となった「君が代斉唱拒否事件」等の最高裁判決を精査し、後者の須藤正彦補足意見の中に判例理論として、教育内容としての妥当性を裁判所が審査すべきこと、また、間接的な権利侵害でも正当化されず違憲となる余地があることを確認した。このことは、信教の自由についても言えるように思われる。
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