2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K16922
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小塚 真啓 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60547082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法人所得課税 / 組織再編税制 |
Outline of Annual Research Achievements |
納税者間,納税者・国家間の経済関係に着目した租税法律関係に関する先行研究の調査・整理の一環として,米国組織再編税制の骨子と言われるCOI(Continuity of Interest)原理の起源と展開に関する批判的検討(William D. Andrews & Alan L. Feld, FEDERAL INCOME TAXATION OF CORPORATE TRANSACTIONS, at 75-136(1994))を手掛かりに,COIに依らず,法人・非法人に関する明示の選択を認めるチェック・ザ・ボックス規則と同様に,課税繰延べと時価課税との明示的な選択を認める制度改革(William D. Andrews, FEDERAL INCOME TAX PROJECT SUBCHAPTER C,PROPOSALS OF THE AMERICAN LAW INSTITUTE AND REPORTER'S STUDY, at 24-197(1982))の可能性と意義について検討を行い,論文として公表した(小塚真啓「組織再編成における課税関係の継続と断絶」岡法65巻3・4号949頁(2016年))。この検討(研究)は,米国組織再編税制におけるCOIが納税者間(法人取得取引における取得法人と対象法人との間)の経済的関係に必ずしも対応しない形式的なもので,課税繰延べと時価課税とを事実上選択できてしまうように形骸化している可能性を示すものであって,翌年度以降の研究において,その可能性を経済学の知見を用いたモデルを構築することでより精緻に示したり,上場企業の有価証券報告書などに現れた現実の取引を用いて実証的に示したりする基礎を築くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課税繰延べと時価課税との間での事実上の選択可能性の法制度上の検討を行うことは本研究課題の構成要素の一つであり,平成27年度において上記検討を行い,論文として公表できたことは,本研究が進展していることを示すものと考えられる。もっとも,チェック・ザ・ボックス規則などによる課税における法人・非法人の間での選択ついては分析を行うことができず,また,課税繰延べと時価課税との間での事実上の選択を実証的に示すところまで進まなかったので,平成28年度において優先的に取り組んでいくこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度では,チェック・ザ・ボックス規則などによる法人・非法人の間での選択についても法制度上の検討を進めるとともに,課税繰延べと時価課税との間での事実上の選択を含め,そうした選択の実態の解明を実証分析の手法を用いて進めることに注力する。また,ゲーム理論や情報の経済学の知見を用いた背後の経済的な関係の分析も当初の計画の通り,本格的に取り組み始める。
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Causes of Carryover |
実証分析を行うにあたり,文献・データ整理のために人件費・謝金を支出する予定であったが,実証分析を開始できなかったため支出せず,翌年度に繰り越した。また,同様の理由で旅費の使用が少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として実証分析のための文献・データ整理のために人件費・謝金を支出することを予定している。
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