2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K16922
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小塚 真啓 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60547082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法人所得課税 / 組織再編税制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、納税者と国家(課税権者)との間の租税法律関係を規律するにあたり、同一にみえる、あるいは、同一にみえるほど酷似した経済活動について異なる取り扱いが定められる背景として経済構造の差異があるのではないかとの仮説のもとに、そのような差異が如何なるものであるのかを、ゲーム理論や情報の経済学などの知見を基として検討することを目指しているが、本年度の半ばになって、急遽、次年度(平成29年度)の税制改正によって非課税でスピンオフを行うルールが新たに設けられることが明らかにされた(その後、本年度末に国会審議を経て成立した平成29年度の税制改正により、同ルールは平成29年10月から実施されることとなった)。 非課税のスピンオフは事業分離の手法であるという点で事業譲渡を代替し得る取引であるが、事業譲渡では課税があるものとされている。したがって、非課税のスピンオフが認められるということは、経済的に類似する取引に異なる課税上の取扱いを行うという本研究の考察対象が新たに生じたといえ、さらに、スピンオフと事業譲渡との代替関係については、アメリカ合衆国の事例を用いた実証研究も存在している。 そこで本年度では、次年度において実証を含めた詳細な分析を行うための下準備として、類似のルールを古くからもち、実際の事例も極めて豊富なアメリカ法の調査を文献だけでなく、現地での実務家へのヒアリングも通じて実施し、それを踏まえて日本で新たに実施されることとなるルールがどのような特徴を有するものであるのか、どのような問題を生じさせ得るものであるのか等を考察し、その研究内容を報告した。この研究報告は、『租税研究』第812号にて講演録の形で公表される予定であるほか、次年度において論文としても取り纏め、公表する予定をしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
非課税のスピンオフ取引は、事業分離の手法という点で時価による事業譲渡とある程度代替関係にあるものであり、平成29年10月から実施される非課税スピンオフのルールの考察に取り組んだことは、課税繰延べと時価課税との間での選択可能性の法制度上の検討という本研究課題の重要な構成要素を進展させる上で重要なものであったと考えられる。 もっとも、本年度の半ばに急遽導入の予定が明らかにされた、スピンオフの非課税についての調査を優先した結果、昨年度において基礎的な考察を終えた課税繰延べと時価課税との間での事実上の選択について実証研究を進めることはできず、また、スピンオフについても実証を始めるには至っていないので、平成29年度においては実証を進めていくことに重点を置くことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
非課税スピンオフのルールが平成29年10月から実施されることに備え、今年度の前半では、スピンオフに関するアメリカ合衆国での実証分析の事例を精査し、日本においてどのような分析が可能であるのか、どのような分析を行うことが適切であるのかを検討し、今年度の後半において分析を実施する。 また、ゲーム理論や情報の経済学の知見を用いた背後の経済的な関係の分析も当初の予定から遅れているが、実証分析の結果なども踏まえて検討を深め、少なくとも初期の検討結果を研究ノートなどの形で公表することを目指す。
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