2018 Fiscal Year Research-status Report
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15K16922
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小塚 真啓 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60547082)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 所得税 / 法人税 / 配当課税 / パートナーシップ課税 / ベイシス |
Outline of Annual Research Achievements |
納税者間、納税者・国家間の経済関係に着目した租税法律関係に関する研究の成果として、組織再編税制の濫用を規制する手法にはルール(準則)とスタンダード(規準)との間の選択があること、および、スタンダード(規準)に基づく規制により良い結果を導き得る可能性があることを指摘する論文(「組織再編税制の濫用規制のゆくえ―濫用防止ルールの是非を中心に」税法学578号55頁(2017年))及び、米国組織再編税制に関する判例法でもあるMacomber判決における税法上の配当概念の意義と背景を論じ る論文(「Macomber判決再々考」岡法67巻3・4号518頁(2018年))を公表しているが、本年度は、前者の研究を実証するための研究資料の収集やディスカッションを客員研究員として在籍しているヴァージニア大学ロースクールにおいて実施すると共に、後者の研究を発展・延長させた、配当課税の将来像を論じた論文(「配当所得課税のあり方‐法人税との関係から」日税研論集74巻217頁(2018年))を公表し、また、実現主義に基づくキャピタル・ゲインへの課税の基盤であるベイシスの概念の基礎的考察を行う論文(「所得課税におけるベイシスの意義-Carry-over basis, 所得概念を手掛かりに」岡法68巻3・4号788頁(2019年))を公表した。 これら平成30年度の研究成果は、これまでの研究成果と同様に、米国組織再編税制上の規制が納税者間(法人取得取引における取得法人と対象法人との間)の経済的関係に必ずしも対応しない形式的なもので、課税繰延べと時価課税とを事実上選択できてしまうように形骸化している可能性を示すものであって、その可能性を経済学の知見を用いたモデルを構築することでより精緻に示したり、上場企業の有価証券報告書などに現れた現実の取引を用いて実証的示す基礎を築くものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
組織再編税制における課税繰延べと時価課税との間での事実上の選択可能性の法制度上の検討を行うことは本研究課題の構成要素の一つであるが、本年度9月からヴァージニア大学ロースクールでの在外研究を開始して研究環境が大きく変化したこともあり、チェック・ザ・ボックス規則などによる課税における法人・非法人の間での選択ついては分析を行うことができず、また、課税繰延べと時価課税との間での事実上の選択を実証的に示すところまでは本年度においても残念ながら至らなかった。もっとも、組織再編税制、特に、非課税法人分割の濫用をどのように規制し、規制するべきであるのか、また、米国連邦所得税における配当概念がどのような背景から成立してきたのかという平成29年度に得られた素材をさらに発展させて論文として公表し、また、近年のアメリカの国際課税改革に伴って経済的には類似する取引で課税が異なる可能性が問題視されてきている国外利益の配当の問題の主要因としてして指摘されているベイシスの概念について論文を公表することができ、実証分析をより有効に行うための準備を進めることはできたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ヴァージニア大学ロースクールでの在外研究を開始したために平成30年度では研究を完了できなかったが、平成31年度では、チェック・ザ・ボックス規則などによる法人・非法人の間での選択についても法制度上の検討を早急に進めるとともに、課税繰延べと時価課税との間での事実上の選択を含め、そうした選択の実態の解明を実証分析の手法を用いて進めることに注力する。また、ゲーム理論や情報の経済学の知見を用いた背後の経済的な関係の分析も計画から遅れてはいるものの、実施し、公表することを目指す。
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Causes of Carryover |
ヴァージニア大学ロースクールでの在外研究を開始して研究環境が変化したため、研究期間の延長を行った。それに伴い、研究費用の一部の執行を繰り延べ、その結果、次年度使用額が生じた。
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